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飴玉注意報
素顔に触れて





ザァーッ



雨が降っている。


君はいるだろうか、


あの街角に。








俺はあの日死ぬほど苦しかった。

信じていた友達からの裏切り。

キミが遠くに行ってしまうような感覚。

とにかく怖かった。

淋しかった。


でも君は居たよね。

雨の中、小さな体を振るわせながら俺を待ってた。


「よぉ。」

『ブン太君!』


俺に気付いた君は俺を見上げた後、立ち上がって頭を下げた。


「なんでいんの?」


俺はズルいのかな?

君に少しでも気にしてほしくて、少しでも心配してほしくて、冷たい言葉を投げ付けてしまう。

思っていないのに、謝りたい気持ちでいっぱいな筈なのに。


『ごめんね、なんか。』


どうして?

どうして君が謝る?


『やっぱりブン太くんと話したくて…』


やめろ。違うんだ。


『また、一緒に居てくれる?』


思わせ振りな態度はもう沢山なんだ。


『またケーキ食べたり…』

「んだよ、」

『え…?』


俺はまた君を傷つけてしまうのか。


「もう嫌なんだよ!」


びくりと肩を震わせて明菜が俺を見た。叱りを待つ子犬の様な目、俺は一生忘れないと思う。


『ち、違うよ!私は…、』

「何がだよ!てめぇは柳生と付き合ってんだろぃ!?」


必死に涙を堪えながら首を振る明菜に、ブン太は聞く耳すら持とうとしない。


「全部聞いたんだよ!全部!なんなんだよ!」


俺は人目を気にせず怒鳴り散らした。

苦しくて、苦しくて、胸が千切れそうだ。


「柳生と話してたんだろ?お前に夢中になってく俺を見て、笑ってたんだろ!?」

『そんな事してないよ!』

雨の中、行き交う人々が傘の合間から二人を見た。


「じゃあ何だよ、お前は付き合ってもない男と一緒に退院嬉しい!なんて言うのか?」


嘲笑うように言うブン太が明菜を見た。

言葉は笑っていても、目が笑っていない。

鋭く明菜を射ぬいていた。


『それは…、』


口籠もる明菜にブン太は溜め息を吐いた。


「ほらな、そーだよな、彼氏以外の男にあんな無邪気な顔見せねぇよなぁ?」


ブン太は立ち上がり、両手で明菜の肩を掴んだ。


『いっ…、痛いよ、ブン太君。』

「ふざけんな!俺がどんな思いだったかなんて、お前にわかるかよっ!」

『きゃっ…、』


ぐらぐらとブン太は明菜の肩を揺らし、おもいっきり怒鳴った。

その時、二人の前に自転車が止まった。


「丸井!止めるんじゃ!」

「丸井君止めて下さい!」


自転車から仁王と柳生が降りて、こちらに向って走ってきた。


「んだよっ!関係ねぇだろ!」


イライラする。

なんで俺が悪者なわけ?

だいたい何で来るんだよ!


「離すんじゃ、ブン。」

「近寄るなよっ!ふざけんな!」


俺は仁王達を睨み付け、再び明菜を見た。


「え…?」


一瞬目を疑った。

目の前には顔を真っ青にして泣いている明菜が居たから。


「は?なに…?」


どうして俺は雨に濡れているんだ?

どうして明菜は泣いている?


「明菜…、」


我に返った時には遅かった。


『ブ、ン太君、怖いよ…、』


明菜は目を閉じ、俺の腕から滑り落ち、ぐたりと倒れた。


「明菜!」


柳生が明菜に近付くのが見えた。

明菜に向って叫んでいる。

何?

何だよ、

俺は、

俺はまた、

罪を重ねてしまったのか?











あきゅろす。
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