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飴玉注意報
真実が欲しい





「で、柳生は知らんかったんじゃな?」


「…ええ。」


「そうか…。」


あの後は大変だった。

丸井が教室を飛び出して逃げてしまったり、飛び出して行った丸井を追い掛けようとして暴れる柳生を抑えたり。

兎に角教室内は騒然としとった。


「すみません。取り乱したりしてしまって…」


俺はカチャリと眼鏡を掛けなおす柳生に目を向けた。まだ額にうっすらと汗が滲んでいる。


「いや、俺は構わんがのう。ブンを連れ戻しに行かんと」


俺がそう言うと柳生も頷いた。

正直俺も焦ったんじゃ。
いつもは大人らしく見守るタイプの柳生が、あんなに我を忘れるなんて。

柳生の話だと柳生とブンの彼女…明菜ちゃんは親同士も仲が良く、兄妹同然に育ったらしい。

だからって普通そんなに取り乱したりするか?

これは俺の考えじゃが、もしも柳生が明菜ちゃんを好きだとしたら?

そうすればしっくりくる。

いや、柳生は紳士らしく皆にそうしたじゃろうか?

相手が明菜ちゃんだったと言うのは理由にならんか?


「なぁ、柳生」


「はい?」


賭けにでるぜよ?


「ブンと明菜ちゃん、どんな関係じゃと思っちょる?」


俺の問いに柳生は驚いた顔をしたがすぐに下を向いた。


「明菜は…丸井君に恋をしています。」


「ほう…」


小さく拳を握る柳生を目を細めて盗み見た。

好き、なのか?


「私が丸井君に言いたいのは……、遊びで、気紛れで明菜に近寄ってほしくなかった、と言う事だけなんですよ?」


しかし話されれば話されるほど分からなくなる。

もう直接聞いた方が早いようじゃ。


「じゃあお前さんに明菜ちゃんへの愛情は?」


俺の質問に柳生は一瞬考え込み、すぐに肩をすくませた。


「それは兄妹みたいな、家族愛のようなものです。」


険しい顔付きだった柳生が、ふと頬を緩めた。

赤の他人に?
口が滑りそうだったがやめた。

幸せそうに笑う柳生が居たから。


「じゃあブンは勘違いしとるようじゃの。」


頭をポリポリと掻きながら仁王は立ち上がった。


「ええ、あの様子で安心しました。本気みたいですね、彼。」


その様子を見て柳生も立ち上がった。


「プリッ」


少しだけ羨ましいぜよ。
人を愛する事が出来るなんて。

俺にもいつかあらわれるじゃろうか?本気で守りたいと思う女が。


「行くかの。」


「ええ。」


勘違いしたままのブン太を探しに、二人は荷物を持って教室を出た。


「あ、仁王君」


「んー?」


自転車の後ろに柳生を乗せてペダルを漕ぐ。


「1つ、言ってない事があるんです」


俺の背後で聞こえた声は、どこか躊躇いがちで弱々しかったのを覚えている。



「なん…じゃ、それ」


「黙っていてすみませんでした。」


時に運命は残酷で苦しい。

柳生から明かされた真実は幼い俺には重すぎた。


二人に幸せになってほしい。

こんな夢でさえ叶えることが難しいなんて…。


街角へと続く道がひどく長く感じられた。











あきゅろす。
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