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飴玉注意報
言わないで





俺は逃げた。

明菜と柳生を見ることが出来なくて。


「なぁ、ブン。どうしたんじゃよ〜。」


学校に行くと仁王が話し掛けてきた。

すぐに元気が無いだのなんだの言って俺にまとわりついてきた。


正直、うるさい。


仁王はこういう事に敏感だから、気が付いて気に掛けてくれている事くらい俺だってわかっている。

だけど無理なんだよ。

子供の俺には耐えられない。


「うるせぇよ。何でもないって言ってんだろ。」


まるで玩具を取られたガキみてぇだよな。

聞いてきたくせに何も言わない仁王にもイライラする。


「んだよっ!ふざけんなっ!」


ガンッと机を蹴って俺は立ち上がった。その拍子に椅子が倒れる。

教室に居た連中は皆、俺を見て目を丸めていた。

まるで怪物が教室に入って来たように一瞬で騒がしさを無くした。


「っ、帰る。」


冗談じゃない。

マジで耐えられない。

俺は鞄を取り、教室を出ようとした。

教室のドアを開けると一番見たくないヤツの顔が其処にはあった。


「んだよ。」


クチャクチャとガムを噛みながら気だるそうに尋ねた。

柳生は黙ってる。

口を開いたかと思い、視線を柳生の唇に移したと同時に、俺の体が後ろに倒れた。

ガシャンッ!

柳生に突き飛ばされた。

周りの生徒が息をのんだのがわかった。


「ってぇ、いきなり何すんだよ!意味わかんねぇ!」


頭を擦りながら柳生を睨んだが、柳生は俺をもっときつく睨んでいた。


「何故、来なかったんですか。」


声こそ落ち着いているものの刺々しさがある。

わかる、柳生は怒ってる。


「だったら何だって言うんだよ。あ?」


なんで柳生に言われなくちゃなんねぇの?

意味わかんねぇ。


「彼女、待っていましたよ、ずっと。」


こんなに怒った柳生を見たのは初めてだった。


「え?丸井、行っとらんのか?ってか何で柳生が知っとるん?」


仁王も驚いて近付いてきた。

黙れ。


「仁王くん…。彼女、明菜は私の知り合いでした。」


黙れよ。


「ほぅ…、じゃが何でまた。」


ポリポリと頭を掻きながら仁王が言った。


「さぁ、だからこうやって丸井君に尋ねに来たのです。」


いいから黙れよ!


「何が知り合いでした、だ!アイツは…、アイツはお前の女なんだろ!?」


ブン太は手に持っていた鞄を床に叩きつけた。


「そりゃ楽しかっただろうな!俺が明菜に本気になってくのを見るのは!っふざけんな!」


俺は教室を出た。
校門を出るまで走った。


「なっ、丸井君!」


柳生は追い掛けようとしたが、仁王に止められた。


「柳生。」


「なんですかっ!貴方まで!」


いつになく取り乱している柳生を見て仁王は少し溜め息を吐いた。


「ちゃんと説明してもらえんか?」


まだ俺たちには難しいのかもしれない。



――恋を語るのは。










あきゅろす。
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