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飴玉注意報
知りたくなかった








「今日なんじゃろ?彼女の退院日。」




「おう!仮だけどなっ!」




胸が高鳴る


鼓動が早い


君に会えると思っただけで、わくわくする。




「聞いとるぶんじゃと、お前さん等、恋人みたいじゃのぅ?」



「なっ!バカやめろっ!」




教室のど真ん中で何言いやがる!


ブン太は、慌てて仁王の口を塞いだ。





「内緒なのっ!」



「なんで…」



ブン太が唇に指をあて、しーっと言いながら顔を歪めたのを見て、仁王はブン太に尋ねた。



「あいつな、知り合いがいるらしいんだよ、立海に。」



「ほぅ、興味深いのぅ…。」



「だろぃ?だけどな、あいつに聞いたって、ニコニコ笑って内緒って言うだけなんだぜ?」



その場面を思い出したのか、いきなりブン太の顔か赤くなった。



「ブンちゃん?」



「あ、いやっ、その…可愛かったなって…。」



あたふたしているブン太を見て、仁王は笑った。



「彼女、手に入ると良かね。」



「おう!」



ニカッと笑うブン太を少しだけ羨ましいと思った。


幸せそうだと。


俺も、恋をすればあんな風になるんじゃろうか。



「あ、そう言えば。」



仁王が教室のドアを見つめた。



「なんなんだよぃ?」



ブン太もそれに続くようにドアを見た。



「いや、柳生にもブンちゃんの彼女と同じ学校に知り合いがおったはずじゃき。待っちょれ。」



「おー!」



目を輝かせたブン太を見て仁王は立ち上がり、教室のドアの所に立っていた柳生に話し掛けに行った。



「誰なんだろ…。」



ドキドキする


俺が知ってるヤツなのか?



「ブンちゃーん。」



ひらひらと手を振りながら、仁王が帰ってきた。



「どうだった?」



「確かにおるが、同一人物じゃなか。だと。」



「そっかー…。」



「ま、気を落としなさんな。」



仁王の言葉に頷いたものの、若干悔しい。



「ちぇっ、つまんねー。」


俺はコロコロとシャーペンを転がしながら考えた。



「誰なんだろ。」


自分の知らない彼女が居る事は知っていた。

だけど、近くに俺より近い存在の奴がいるなんて何だか悔しかった。



「1日って長ぇなぁ…。」



昼の日差しが暑い。


早く退院祝いを渡したい。

この前の傘のお礼と一緒に。

まだ渡せていないチョコレートは、鞄から早く出たいと言っているに違いない。



「あーっ!会いてぇ!」






























『ありがとうございました!』


「仮退院なんだから、体に気を付けるのよ?」


『先生に迷惑は、かけられないもんねっ!』


病院の正面玄関が開いた音と、彼女の声で病院から出てきたとわかる。

彼女の声しかしないと言うことは1人だろうか?


緊張してきた…。


何で俺は隠れてんだ?


ブン太は病院前の公園の茂みに隠れていた。



「(そういえば…。明菜の母さんには会ったことなかったな。)」



また、距離が出来る。

いつも俺が行く時間は面会時間ギリギリだったから、顔を合わせることがなかったのだろう。



『先生っ!また!』


パンッと風船ガムが割れる。

彼女の声で我に返った。



行かなくちゃ。

彼女の元へ行こうと、茂みから体を出して病院の方を見た。



「………は?」



俺が見たのは紛れもなく彼女。

いつもより顔色がよく、元気になったんだと安心できた。


でも隣に居たのは、



『もうっ!そうやって私をからかうんだからっ!』


「実に明菜はからかいやすいですね。」


『意地悪っ!』


「私がですか?」




(残念。立海に知り合いがいるんだ。)



崩れてく。



(ブン太くんには内緒。とってもいい人よ?)



だって、俺じゃ適わない。



(ブン太くん、絶対知ってるって!)




『もうっ!ひろのバカ。』



「紳士にそれは無いでしょう?」



どうして君は笑っているの?



『ひろ?まだ、ここに居たいよ。』



「構いませんよ?」



俺の心は、まだ恋に馴れていなかったんだ。




俺は走った。

二人を直視出来なくて。

柳生が知り合い?

あの会話は知り合い程度のもの?

いや、お互い好きなんじゃねぇ?

不安と嫉妬で、俺は押し潰されそうだった。











あきゅろす。
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