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また会いたくて
COUNT:1








『景吾〜…』



ごろんと、ベッドの中で跡部の方を見る桜



「あーん?」



景吾の腕枕が気持ち良い



『…何でもないよ』



「そうか…」




どんなに嘆いたって朝はやってくる



最後の日


私は貴方に何ができるのかな?




「なぁ、桜…?」



『ん?』



今度は、跡部が桜に話し掛けた



「何故…言ってくれなかった?」




『え?』




困ったような顔で跡部は桜を見つめた




『それは…』



静かな跡部の部屋


時を刻む音だけが、やけにうるさい




「なぁ…どうしてだ?」




『だって、言っちゃったら、景吾は二人では居てくれないでしょ?』




「は?」



跡部が少し驚いたように表情をかえた

そしてすぐ、いつものように眉間に皺を寄せた




「俺は、桜と居てぇから学校なんか行かねぇ。二人で居るに決まってんだろうが」




自信たっぷりと言わんばかりに、跡部は腕を組んだ



『ふふっ、景吾は昔から変わってないんだから…』




「あーん?どういう意味だよ。」




跡部が桜の目線に自らの目線を絡ませる




『景吾はね、昔から私を喜ばせようって、頑張ってたよね。』




「何かしたか?」




『うん。意外に尽くすタイプだな〜って思った。』



桜が軽く笑うのを見て、跡部がくしゃっと桜の頭を撫でた




『景吾…』



桜は、跡部の手に擦り寄るようにして、目を閉じた




「なんだ?」



跡部も応えるように、腕を桜の腰に回す




『約束、して?』



「はっ、定番だな。ドラマごっこか?」



『ふふっ、それでいいよ。』



余裕は無いはずなのに二人は笑う



「言ってみろよ?」




『あのね、』





そうしないと、涙腺が緩みそうだったから




ねぇ、景吾?



今も“約束”覚えてくれていますか?



忘れちゃったかな?



そうだよね。



私が忘れてって言ったのに、



覚えてくれてるわけ無い、か。







「……行くぞ」




『うん。』



景吾は、私との約束を聞くと、立ち上がった


もう、時間が無いから




「急ぐぞ?」




『はい。』



私達が向ったのは、学校



急ぐとは言ったが、交通手段は徒歩



これは私が頼んだんだ。

景吾との思い出を一つ一つ噛み締めながら逝きたかったから。












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