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SHORT
お願い事。












「あれから、一年も経つんやなぁ……。」


そよそよと夜風に揺れる笹を見て、俺は溜め息を吐いた。


「去年も、こんなんやったかな。……いや、」


去年の七夕は、二人で俺の家の縁側に腰を掛けて、かき氷を食べながら話した。


「何が、あかんかったんやろ。」


俺は遠い記憶を辿るように目を閉じた。




















浴衣に身を包んだ君。

綺麗だと俺は呟いた。

でも、君は悲しそうに微笑んだね。


「綾の白い肌が眩しい。綾のすべてに溜め息が出る」


俺は君の潤んだ瞳を見つめて囁いた。

君限定の愛の言葉。

だけど、君はうつむいた。


『蔵、もう、無理かもしれない』


俺は食べていたかき氷を思わず見つめる。


「……は?」


俺は間抜けな声をだしてしまい、なんだか恥ずかしくなり、綾と同じように俯いた。

ふと綾の手を見ると、微かに震えていた。


『もう、限界なの……っ、』


目をギュッと瞑り、綾の瞳からは涙が流れた。


「……っ、いきなり?俺、なんかしてもうた?」


君は首を横に振って、俺を見上げたんだ。


「俺、綾の全部が大好きやで?体の隅々まで、何もかも!綾は違ったんか!?」

『く、蔵、お願い!』


俺の記憶はそこで止まって――……、















バシンッ


何者かにより、白石は頭を殴られた。


『そこだよ、馬鹿。てか都合良く最後だけ忘れんな。』


そこには白石の記憶に出てきた少女、綾が仁王立ちしていた。


「あ、綾」

『あ、じゃねぇよ。今すぐ訂正しろ』


ポリポリと頭を掻きながら、何のこと?とキョトンと綾を見上げる白石。


『……だから、アンタのその意味が分からなくて、気持ち悪い誉め方が嫌だって言ってんの!』

「そーなん?」


またもや間抜け面な白石を見て、綾は半ばイライラしなが言った。


『もう、いい!たまには素直な気持ちで私を誉めてよね』


プイッと外方を向いた綾に白石は困ったように笑った。


「本心なんやけどなぁ……」

『着飾った言葉なんかいらない!』

「ほんまやって!」


俺が悲しげに見上げれば、綾は困ったように見つめ返してきた。


「来年も、一緒におってな」

『……はい』


変態な俺が愛した、ドMな君。

繋いだ手と手がひんやり気持ち良かった。










2014/03/20


あきゅろす。
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