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SHORT
初恋の再来




「お邪魔するぜよ」


「あははっ!友達の家なんだから気にしないでよ〜!」


「お前さんの友達じゃろ、俺は他人じゃ」


今日は女友達に紹介したい奴がいると、その相手の家に呼び出された。

行く気は無かったが合コンみたいなノリらしく、丸井や赤也も来るようだったから出向いた。

二階へと続く階段を上る。

次第に赤也達の声が聞こえてきた。


「あははっ!じゃあ綾先輩はフリーなんすか?」


『だからっ!私は好きな人いるんだってば〜!』


徐々に明かりの付いた部屋へと案内される。


「でも振られたんだろぃ?」


ガチャッとドアを開いた。


『もーっ!いいもんっ!私にはテディベアがあるから!』


ドクン


「よ!またまた立海大のイケメン連れてきたよ〜!」


幻か?

俺は部屋の中にいる少女が抱き締めているテディベアを見た。

あの時の彼女に渡した物とそっくり、というか同じ物に見えた。


「あっ!仁王先輩!こっちどーぞ!」


「あ、ああ。」


赤也に言われて席に着く。

隣に座った俺に君はどんな気持ちを抱いているんじゃろうか。


徐々に綾に会えた嬉しさが込み上げてきた。

「んだよ仁王、らしくねーな。」


やばいぜよ。緊張しちょる。


少しだけ綾を見ると、綾は顔を真っ赤にして黙り込んでいた。


「何?まーた綾はテディベアの話してんの?もう諦めなさいよ!」


女友達が発した言葉に綾はあたふたとしていた。

可愛いのう。


「乙女っスよね〜!」


『違っ…あ、えっと…もう!』


綾は俯いてテディベアに顔を押しつけていた。

そりゃそうじゃろ。

誰だって恥ずかしいぜよ。

でも、少しだけ期待しても良いかのう?

俺の事をまだ思っちょるって。


「赤也は誰狙いなんかのう?」


「俺は〜…」


俺はさりげなく話題をそらそうと赤也を見た。


「仁王先輩は?」


赤也が答え終わったのか、赤也の隣にいた女が照れている。

そんな様子を満足気に見て、赤也が身を乗り出して俺に聞いてきた。


「あ〜…俺は…」


ちらりと綾を見れば不安気にこっちを見ちょった。

自然ににやけそうじゃ。


「また、綾ちゃんかのう。」


『!』


俺はもう一度初恋をし直す事にするぜよ。


「また?」


赤也達が頭にクエスチョンマークを浮かべていたが、構うもんか。


『いい、の?』


「ククッ、愚問ぜよ。」


俺は涙目になった綾の頭を優しく撫でた。


「じゃあ丸井先輩は?」


赤也がまた身を乗り出して丸井に質問していた。


『幸せ』


「俺もじゃ」


机の下で俺達は皆に見えないように手を繋いだ。


運命っていうのは本当にあるみたいじゃのう。


俺達の横には、ボロボロになったテディベアが置いてあった。









初恋の再来
(また1から始めよう)


2009/12/04
仁王誕生日記念夢


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