SHORT ポッキーゲーム 「綾!来い!」 『断る!』 今日は2月14日。 世間ではバレンタインデーと言われている。 「何が不満なんだ!俺様が相手してやるって言ってんだぞ!?」 『だから嫌なのよっ!』 私が一喝すると、跡部くんは少しだけ狼狽えたように見えたが、またいつもの自信満々な顔に戻っていた。 「さてはお前、照れてるな?」 跡部くんは教室の椅子に座っているはずなのに、何だか王様の椅子みたいなものの幻影が見えるのは私だけかな? 大体、照れてないし。 『……。』 「俺様は予約待ちだぞ?」 跡部くんは自慢気に髪を弄りながら、アイスブルーの瞳を私に向ける。 『だから、嫌。』 「は?」 『ううん、なんでもないよ。』 私は貴方の一番になりたいの。 他に人がいるなんて考えられない。 バレンタインデーは一番大好きな人と過ごす日なのに。 私は馬鹿みたいに順番待ちなんてありえない。 「ったく。我が儘なメス猫だ。」 『えへへ…。』 でも、そんな最低な男と一緒に居たいなんて、好きだなんて、私もありえないのかもしれない。 「ほら、」 『うん。』 私は、ゆっくり跡部くんにチョコレートを渡した。 願わくは、 どうか私を、 一番、近い距離に。 ポッキーゲーム (近さと甘さは比例する。) 2010/2/14 バレンタインデー記念 |