SHORT 君になら食べられてもいいよ 「なー。綾?」 『ひっく、う、ぇ…。』 「泣くなや。な?」 『だって…。』 君はハロウィンに姿を現す吸血鬼。 漆黒のマントに身を包み、対照的な赤い唇で世の男たちを獲物とする。 誰をも魅了する美貌と、白い肌。 自分に自信を持ち、気高い。 というそんな言い回しが、全くと言っていいほど似合わない君。 「ほら、泣き止み?これじゃ、金ちゃんにも笑われんで?」 小さくて甘えたな君。 何かあるとすぐに涙を見せるし、何より人を信じやすい。 『うっ…、蔵ぁ…。』 「あーはいはい。」 ぎゅっと抱き締めると、君は安心したように微笑む。 『蔵?私ね、食べちゃうかも。』 「ん、ええよ。綾になら万々歳や。」 小さな君の牙が、俺の首筋に触れた。 君になら食べられてもいいよ (君を愛した僕の罪だから。) 2009/10/31 ハロウィン記念 |