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SHORT
仮装、火葬








「にお〜」


甘ったるい声。


「今日はね〜、お弁当作ってきたんだぁ。」


違う。

俺が求めとるんは、そんなんじゃなか。

もっと澄んだ

もっと優しい



『雅治……』



――――君。














「柳生…、今日は部活休む事にするぜよ。真田に言っちょってくれんか?」



「今日ですか?どうして?」



俺がいきなり言いだしたのに驚いたのか、柳生は目を丸めた。



「周りを見てみんしゃい。今日はハロウィンじゃき、彼女がどうしても出かけるって言いだしてのぅ…。」


周りを見渡せば、お菓子を交換し合う女子達が目につく。



「いいですけど…、私も遅れて行く事になっているんですよ。」


「お前さんが?」



これは予想外じゃ。

真面目な柳生が休むとは。



「実は、私も彼女と会う約束をしていまして…。」



ずれた眼鏡を元に戻しながら、柳生は言いにくそうに目を逸らした。



「ほぅ…。」



「ですから、ご自分で伝えに――『柳生くーんっ!』


柳生が目を見開き、俺から目線を声の方へと移した。



「綾さん…。」



走ってきた女は、柳生に抱き付く。


ズキン、と俺の心の奥に何かが刺さった気がした。

締め付けられているような、そんな感じ。



『あ、……まさは、仁王くん。』



女は俺に気が付いたのか、ばつが悪いように柳生から少し離れた。



なんじゃ。

呼べよ。

本当は呼びたいんじゃろう?

昔のように、雅治と。



「柿本達もお熱いのぅ…。」



俺は震える拳を握りしめ、力なく笑った。



「仁王くん…。」



「それじゃ、邪魔者は退散するかのぅ。頼んだぜよ柳生。」



俺はヒラヒラ手を振りながら、二人から離れた。

そのまま今の彼女の方へと歩いた。

もう、綾とは世界が違うんじゃ。

どんなに触れたくても、絶対に触れられん。



『仁王くん…何だって?』


「いえ、部活を休むと伝えられただけですよ。」



にこりと柳生は微笑み、綾の手を握り返した。



それが見えると、また胸が痛んだ気がしたが、俺は気付かないフリをした。



手放したものは返ってはこない。


だから、大切なキミが幸せならそれでいい。


だから俺は、この綾への大き過ぎる想いを、燃やそうと決めたんじゃ。











仮装、火葬
(隠せない想いなら、燃やしてしまえ。)


2009/10/31
ハロウィン記念


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