SHORT
包帯といて素顔みせてよ
「なんすか、これ。」
何故、俺はこないな格好させられとるんですか。
「ぷっ、似おうとるで!財前!」
『っくく、似合ってるよー?』
「しばくぞコラ。」
狼男の格好をした白石と、魔女の格好をした綾に笑われているのは、ティッシュペーパーでぐるぐると身体中を巻かれた財前。
「で、何やっとんのですか。」
ギラギラと装飾された部室を見渡したあと、先輩等を見る。
「お、ええとこに気ぃ付いたな。」
「パーティーやでっ!なっ!小春!」
「あーもうっ!近寄らんとていて!」
一人一人仮装をして、好き放題やってる。
『パーティーだよ!光!』
「アンタ部員ちゃうでしょ。」
ぷいっと俺は目線を綾先輩から逸らした。
苦手なんや、この人。
見透かすように俺を見てくる。
「俺、帰りますわ。」
「光!ノリ悪いで!関西人はノリとツッコミが命やっ!」
バタンと部室のドアを閉めて俺は外に出た。
ぐるぐる巻かれたティッシュペーパーがめっちゃうざい。
「……」
今頃泣いてんやろな、あの人。
知っとるで、あの人の気持ちくらい。
だから嫌なんすわ。
だから冷たくしてしまう。
“光!”
気を抜いたら、先輩の声に甘えてしまう。
まだ子供の俺には人と距離を縮めるんは怖いんや。
包帯といて素顔みせてよ
(愛し方を知らない包帯男)
2009/10/31
ハロウィン記念
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