血塗れた僕を見た君の瞳
『光、私達、いつまで一緒にいられる?』
最近名前は、それしか言わない。
不安げに財前を見ては涙を流す。
そのたびに財前は“俺が捕まるまで”と笑って答えた。
そうすれば名前は、悩んだように眉を下げる。
『私も殺そうとしたのに。』
「せやけど実際に刺したんは俺やし。」
涙目で財前を見る名前。
愛しい。
ああ、俺はいつからこんなに名前を好きになったんだ。
お互いを確かめるように抱き合う。
『こんなに好きなのに。』
「俺かて好きやで?」
いつまで続くかわからない。
事件が公になってから4日経つ。
二人を引き裂く魔の手は、すぐそこまでやってきていた。
**********
『光、光起きて!』
財前が目を覚ますと朝の筈なのに、部屋の中が薄暗かった。
「な、に?」
財前は眠たい目を擦り、名前を抱き締めていた腕を少し緩めた。
『警察。』
「……そっか。」
通りで眠たい筈だ。
財前は携帯のディスプレイを見て時間を確認した。
午前4時。
『早かったね。なんか。』
「ん。」
ドンドンと玄関の戸を叩く音がする。
警察の叫び声が聞こえたが、二人は全く動じず、いつものようにコーヒーを煎れてソファーへ座った。
『……1週間も一緒に居れなかったな。』
「そやね。」
『もっと光と居たかったな。』
「まぁ、俺が刑務所から出てくるまで会えへんな。」
俯く名前を余所に財前は笑った。
外は騒がしい。
閉めきったカーテンに人影が映っていた。
『……光、』
「……行ってくるわ。」
財前はソファーから立ち上がり、名前の唇にキスを落とした。
深く、深く。
名前は苦しいのか、上から噛み付くようなキスをする財前の肩を軽く叩いた。
『ひ、光!』
「っ、名前……!」
財前は名前の首に手を回して抱き締めた。
「続きは……、帰ってきてからやな。」
『……光。』
涙に濡れた瞳で名前は財前を見据えた。
「一緒におったら……、俺、お前の事殺してまうわ。」
財前がゆっくり名前から離れようと腕の力を緩めた隙に、名前は自らの腕に力を込めた。
グチョリ
『光、離れたくないよ。』
財前は見た。
名前の濡れた瞳に自分が映っていたのを。
そしてそれが血に染まっていたことも。
ああ、もう戻れない。
財前は下腹部を押さえながら、名前に小さく微笑んだ。
外は警察の声で、うるさい。
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