[携帯モード] [URL送信]

遠回り
08.心地よい響き









カチャ…



美香が風呂から上がり、また先程の様に跡部の隣に座る


小さく震える姿は、叱りを待つ子犬のようだ







「今から話す事…ちゃんと聞けるか?」




小さな子供に諭すように、ゆっくりと話す跡部



美香は、ただ小さく頷いた






「あれはな…お前と忍足が気まずくなりはじめた頃だ。というか…原因…だな」





『!?』





あの頃の俺たちは、お前が受けていた嫌がらせを、どうやって止めるか話し合っていたんだ





「侑士達が別れたら、あの女は満足なわけ?」



岳人も他の奴らもみんな苛立ちはあったが、誰も二人を別れさせてまで嫌がらせを止めようとは考えちゃいなかった




それに犯人は分かっていた


神田恵美


ずっと忍足に想いを寄せていたらしい



『恵美…さん…』




「あぁ、あの女だ」





それで俺たちは忍足に提案したんだ。距離を置いてみろ、とな





『それで…一時期だけ…』






「最初はよかった。何事も無いように嫌がらせは止まった。」




でも嫌がらせが止まっても、忍足がお前に近づく事が無くなった





『………』





「ごめんな…お前の為とはいえ、口止めされていた嫌がらせの事を忍足に話したのは俺だ」





『いえ…先輩は悪くないです』





「ありがとう…」





やっと二人の間を暖かい雰囲気が包みだした




『…学校行きます?』




悪戯っぽく微笑むと、跡部は美香の頭をクシャクシャと撫でて、車を用意する、と言って部屋を出た






『……終わりかな』





小さな美香の呟きは誰にも届かなかった





午後一時


ちょうど昼休みだろうか


















『でか…』




美香は、車内を見渡し一言呟いた



「アーン?普通だろ」



フッと笑い外を見る跡部





『……』




「……」




少しの沈黙を跡部が崩した





「言い訳にしか聞こえねぇかもしれねぇが…」





『え?』





流れる景色を見ながら跡部は言った





「アイツはお前の事を好きすぎて、距離を置いたんだ。」





『…』




嘘よ




「信じてやれ」











『だって…』





流れる景色が止まった






「は?」






『先輩は…違う女のヒトを抱いてました』






運転手が着いたと言い、後部座席のドアを開く






「何…言って」





跡部は、急いで車から出た




『もう…信じるの…難しいみたいです』





力なく笑う美香が、車から降りたと同時に跡部は、美香を抱き締めた





『先輩…』





校門の前だろうが



生徒の前だろうが気にしない



辛い時は笑うんじゃねぇ






「んなこと言うなよ…」





抱き締められた腕が心地良い…











校門で抱き合う二人の影






「あっれ〜?跡部と…美香だC〜!!」





運悪く


テニス部R陣がグランドにいた






「チッ…行くぞ」





『あ、はい!』





跡部は美香の腕を引き、テニス部がいるグランドを通る






視線が



痛い









第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!