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遠回り
16.消えない過去









ハァハァ…







息が苦しい






『ん、く…』






涙が止まらない






『…ゆ、し…』






ガチャンッ






忍足に別れを告げた美香は、走った




家まで




一度も振り返らずに







「ちょっと美香〜?ドアくらい静かに閉めなさ〜い?」







『っるさいな!ごめんっ!』






何もかも理解できない




頭に焼き付いた



侑士の瞳




涙に濡れてた




辛かった?




辛かったのは私よ




これで…



良かったのよ




バタンと自室のベッドへ、美香は体を預けた





















『侑士!』




「なんなん?」




笑顔が綺麗な貴方






『ねぇっ!今日ね…』





「プ…ほんま?」





ズレた眼鏡を支える仕草





『ずっと一緒に…いてね?』






「美香もな…」





美香、そう私を呼ぶ優しい声と瞳








目を閉じれば



ゆっくりと戻ってくる




幸せだった記憶





これで良いんだ





消えない過去があるから





大丈夫。





侑士との





綺麗な記憶を





鮮明に






焼き付けておこう







もう、寂しくないように











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