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遠回り
14.時間は止まることを知らない













眠れなかった




忍足先輩が来ると思うと























跡部先輩に電話した日

私は気持ちを整理したはずだった



忍足先輩への、…侑士への



でも、先輩に来てほしくないって気持ちの方が強くって

頭の中がぐしゃぐしゃだった



ただ、何度も何度も
時間が戻れば、

なんて考えてた




そんなこと

神様でも出来っこない
















『忍足先輩』



貴方は来てくれました


思い出が残る図書室に


始まりと終わりを


決めるために





「なん?」





涼しい顔で私を見る貴方



もう、
何とも思ってないのかな?


緊張しているのは
多分、私だけ



手伝ってくれた跡部先輩にも
ありがとう、言わなくちゃ



これで最後だから



最後








『私達、別れてましたね』





もう、迷惑



かけません






涙に押されて


自分では理解できない言葉が


口から零れ落ちる




『先輩と過ごした時間、幸せでした。すごく。』





笑顔で終わらなくちゃ





「……うん」






目を伏せる先輩に
私は終わりをさとった






『先輩が…好き過ぎて、おか、おかしくなっちゃいます…』




涙で途切れる言葉





「うん、」





それしか言わない先輩に
悔しくなる






『先輩の…行動とか、も、う、我慢が…出来なくてっ、でも…別れたくなくて、』





シン…と静まる図書室



いつ来ても静かだ






「…なんでなん?」






ふと、顔を上げると貴方は
悲しい目をしていましたね




私と同じ


濡れていました







『せ、んぱ…』







「俺かて…辛かってん…」






理解出来ないよ


先輩



それだけじゃ




子供の私には



全然。






『っ……先輩はっ!何もわかってくれませんでした!!だからっ、だから…』






拳に力が入る



震える




『……っさようなら!』








「美香…!!」








また、静かな図書室へと



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あきゅろす。
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