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銀魂短編
素直になろうよ【中】:山崎


side:ナマエ



「どうしよう、怒らせた…」
「ナマエの…か、彼氏?…おとなしそうに見えて、結構怖ェな…」
「…」

そりゃあ、ああ見えて真撰組の監察として命はって仕事をしているヤツだ。
その辺のサラリーマンたちと一緒にしてもらっては困る。なんて言ったら、サラリーマンの人たちに失礼か。
それにしても退のヤツ…ちょっとやりすぎでしょ。
だって私の古い友人は、一生懸命こらえてはいるようだが、かなりビビっている。
先ほどの退、もちろんかなり抑えてあったけど、殺気がダダ漏れだった。
にっこりほほ笑む退の周りの空気が急激に冷えた瞬間、私まで背筋が寒くなってしまった。

でも、なんの断りも挨拶もなく隣に座ったこの友人と、何の紹介もせず話に盛り上がってしまった私が確実に悪い。
今考えるとたぶんこの友人は、一見ジミーな退のことを舐めていた。だからわざとあんな態度をとったんだと思う。でもそれに気付かなかった私が一番悪いし、何より退をないがしろにしてしまった。
ちょっとまて私…酷すぎる…。
どうやら私は何かに集中してしまうと、他のことに気が回らなくなるみたいだ。
急速に不安が込み上げてくる。
退、結構怒ってたよね……早く追いかけて謝ってしまいたい。

「ごめん、私行くね。会計はしとくから」

お金は退に返さなくちゃいけない。退の置いて行ったお札を財布にしまい、自分のお金で会計を済ます。
友人への挨拶もそこそこに店を飛び出した。


そんなに遠くには行っていないはずと、あたりをきょろきょろ見渡しながら歩いた。
とは言っても江戸の街は広い。勘を頼りに探すしかなかった。
人通りの多い街中を、ひたすら歩きまる。

しばらくすると、一見の茶屋が目に入り、なぜかそちらへひかれた。見れば退が茶屋の前の長椅子で何か食べながら休憩しているようだった。
うそ、見つかった!
ああ、よかった…。
そう思って近づこうとして、すぐに足が止まってしまった。
退の隣に、見るからにきれいでかわいい女の人たちが数人、座っている。
しかも退と楽しそうに喋っている。

私みたいに、昔の知り合いに会ったの?
でも退は武州の出身で、こっちに来てからはずっと真撰組として働いているから、そんなに女の人の知り合いがいるとは思えないし…。
じゃあもしかして逆ナン!?
いやいや、土方さんとか沖田君あたりなら分かるけど、退が逆ナンって…アイツ地味で目立たないキャラ設定なんだから、逆ナンなんかされたらそれは退のアイデンティティに関わる重大問題だと思うんだけど…!!
いやでも、それはあくまで設定の話で、退は顔はかっこいいし、意地悪だけど何だかんだで優しいし、喧嘩も強いし、って何考えてんだ私は。アイツはミントン野郎、生粋のミントン野郎…
いやいやいや、普通に考えて、単純に相席しただけでしょ!他の席めっちゃ空いてるけど、きっとたまたま相席しただけだ!!

現実を見たくないのかもしれない。
頭の中がぐちゃぐちゃするから、往来のど真ん中で立ち往生してしまっていた。周囲の目が痛い。でも足が進まない。
すると例の数人の女の人たちのグループが立ち上がった。帰るのか?と思えば、一緒に退まで立ち上がった。
ショックで固まる。
今からその女の人たちと一緒にどこかにいくの?
そりゃ退にとっては久々の休みだから満喫したいんだろうけど、だからって他の女の子と過ごさなくてもいいんじゃない!?
でも私は文句を言える立場じゃない。
だって、せっかく2人で休日を過ごそうとしたのに、私は久しぶりに会った友達と、退そっちのけで盛り上がってしまったんだから。
あんなことされて気分が悪くならない人間はいないよな…今考えれば、私どんだけ自己中だったんだろ…
そう思うと、もはや泣きたくなってきた。
やだ、私、嫌われたかもしれない…。

付き合ってるのに、行かないでという一言さえ言えないなんて…。
でも、自業自得だ…

ヤバい、ほんとに涙でそう…

ここに居たってしょうがないし、退が知らない女の人と楽しそうにしてるところなんか見ていたくない。
もう帰ろうか……。
そう思った瞬間。

女の人たちと話す退が、
くるりとこちらへ振り向いて、

私は、
気まずさと罪悪感で、
身動きがとれなくなってしまった。










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あきゅろす。
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