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バカとクロスと仮面ライダー
第1話 バカなアイツは魔法使い
青い星『地球』

我々人間が住むこの世界は、今日本のある所を中心に、平穏が崩れはじめていた。

平穏を壊す者…それは何者なのかはまだ分からないことが多い。

だが、同時に平穏を守る者もいた。その人物は、仮面で素顔を隠し、愛用のマシーンで駆けつけ、人々を助ける戦士。

その名を、『仮面ライダー』……。


この話は、その仮面ライダーに選ばれた、とある学園に通う高校生たちの、熱く、時には悲しい戦士たちの戦いの物語である。





『文月学園』に通う2年Fクラスの生徒『吉井明久』は学園一のバカなことで有名な生徒だ。彼は今、自らに与えられた使命『観察処分者』としての仕事をやっていた。まあ、その仕事の内容も、『召喚獣』を使った教師の雑用が主なのだが……。


「なんか冒頭から酷いこと言われてる気がするけど、気のせいだよね?」


気のせいではない。と言うより早く終わりたければ口ではなく、手を動かしてほしいものである。


「うるさいなぁ!大体なんで地の文が僕と会話してるんだよ!おかしいでしょ!」


それは話しかけてきたお前が悪い。


「う、否定できない……」


さて、雑務をこなしていると、ポケットに入っている携帯電話からメールの着信音が鳴る。何事かと思った明久が携帯を取りだし、メールを確認する。


『明久くん。お仕事お疲れ様。今日の夕飯、明久くんも一緒にどうかな?明久くん一人暮らしはじめてからまともに食事とってないって聞いたから心配しちゃって……もし来れたら来てね?待ってるから。
 芳佳』


メールの送り主は2年Cクラスに所属する女子生徒『宮藤芳佳』からだった。彼女は明久の小さい頃からの幼馴染みで、人を優しく思いやり、家事もこなせる上に、まるで妹のようにかわいいというまさに将来お嫁さんにするなら完璧な人物である。


「嬉しいこと言ってくれるなぁ〜芳佳は。よし、さっさと終わらせて、芳佳の家に行こう!」


久々に豪華な夕飯にありったけると確信した明久は、テキパキと召喚獣を操作して仕事を片付けていった。

…それから20分後。雑務を終えた明久は鼻歌を歌いながら幼馴染の家へと向かう。


「なに作ってくれてるのかな〜?オーソドックスにカレーかな?それともオムライスかな?でも、芳佳や芳佳のお母さんとおばあさんが作る料理って基本どれもおいしんだよね〜♪」
「きゃあぁぁーーーー!!」
「!?」


上機嫌だった彼の耳に聞こえてきたのは少女の悲鳴。聞こえてきたほうの道へと走り出し、たどり着いた先に見えたものは、腰が抜け涙目になって怯える少女を、手に持っている斧状の刃がついた槍で襲うとする水色の体に、大きな角を二本持つ牛の怪物がいた。


「さあ、絶望してファントムを生み出せ!」
「い、いや…誰か、誰か助けてぇぇーーー!!」


少女がそう叫んだときだった。牛の怪物『ミノタウロスファントム』に銃弾が何発も当たり、ミノタウロスファントムは少女から遠ざかるように地面を転がる。


「ふー、危ない危ない。そこの君、大丈夫?」
「え?一体なにが……?」
「ぬぐうぅぅぅ…!貴様、指輪の魔法使いか!?」
「ご名答」


指輪の魔法使いと呼ばれる少年、明久の手には変わった形をした銀色の銃『ウィザーソードガン』を持っていた。先ほどミノタウロスに発砲したのも彼だ。


「全く、こっちは仕事終えてお腹空いてこれから幼馴染の家で夕飯食べようと思ったのに……空気読めないなぁ…」
「ええい!お前の用など知ったことか!」
「あっそ。だったら早く終わらせるよ」
<ドライバーオン・プリーズ>


明久は指輪をはめた右手を腹部にかざすと、電子音が発声され、ベルト『ウィザードライバー』が巻かれる。明久はベルトのレバーを操作して、黒い手形の飾り『ハンドオーサー』を左側に傾ける。


<シャバドゥビ・タッチ・ヘーンシーン!シャバドゥビ・タッチ・ヘーンシーン!シャバドゥビ・タッチ・ヘーンシーン!>
「変身!」
<フレイム・プリーズ ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!>


次に彼は、左手に仮面を模した赤い指輪をはめ、指輪の目の部分にあたるカバーを下ろし、左手をハンドオーサーにかざす。左腕を横に伸ばすと炎を出す赤い魔法陣が現れ、その魔法陣が明久の全身を通り抜けると、黒いコートに赤いアーマー、顔はルビーの仮面で隠した戦士『仮面ライダーウィザード・フレイムスタイル(以後FS)』へと姿を変えた。


「へ…変身した?一体何がどうなって…」
「君、早く逃げたほうがいいよ」
「えっ…?あ、はい!」


少女は立ち上がり、その場から走ってそそくさと退散した。


「さあ、ショータイムだ」


ウィザードFSが一言決め台詞を言うと、ウィザーソードガンをガンモードからソードモードに変形させ、ミノタウロスファントムに駆け出し、斬りかかる。


「はあっ!たあっ!であっ!」
「ふん!ぬぅん、ぐお!」
「はあぁ!」
「ぐあぁ!」


ミノタウロスファントムの持っている槍を弾き飛ばし、その後も斬りつけるウィザードFS。立ち上がったミノタウロスファントムは二本の角をウィザードFSに向けて、闘牛のごとく突進する。


「うおぉぉーーー!!」
「あらよっと」


しかしウィザードFSは突進してきたミノタウロスファントムを飛び越えて回避し、その間に赤い指輪から黄色の指輪にはめかえる。


<シャバドゥビ・タッチ・ヘーンシーン! ランド・プリーズ ド・ド・ドドドン・ドン・ドドドン>


ウィザードFSは黄色の魔法陣を通り抜けると、今度は黄色のアーマーに同じく黄色い四角型の仮面の姿をした『ウィザード・ランドスタイル(以後RS)』へとスタイルチェンジする。


「! ぬおぉぉーーー!!」
<ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー! ディフェンド・プリーズ>
「うおぉぉ!?」


ウィザードRSは右手の指輪をはめかえ、レバーを操作してハンドオーサーを右側に傾け、右手をかざすと地面から土で形成された壁が出現し、突進してきたミノタウロスファントムの動きを止めた。さらに二本の角は深く突き刺さっているせいか、中々抜けないでいた。


「と、とれん…!」
「そんなに取りたいならとってあげる、よっと!」
「ぐあぁぁぁぁ!!」


ウィザードRSは土の壁を思い切り蹴り上げると、土の壁を砕いただけでなく、ミノタウロスファントムの角もボキっと折れた。


<シャバドゥビ・タッチ・ヘーンシーン! フレイム・プリーズ ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!>
「さて、フィナーレだ」


ウィザードFSへと戻ると、右手に新しい指輪をはめ、ハンドオーサーを右側に傾ける。


<ルパッチ・マジック・タッチ・ゴー! チョーイイネ! キックストライク!サイコー!>
「ふっ!はっ! たあぁぁぁぁぁぁ!!」


ウィザードFSの足元に赤い魔法陣が出現し、両足に炎を纏うと、ウィザードFSはロンダートと呼ばれる体操技を交えて威力を増幅させ、空中反転してミノタウロスファントムに右足を突き出した必殺の飛び蹴り『ストライクウィザード』を放った。


「ぐおおおおおお!!?」

ドゴォォォォォォン!!

「ふぃ〜」


着地したウィザードFSはくるくると回って決めポーズをとり、断末魔を上げながら爆発するミノタウロスファントムを背に、一息つく。





戦いを終えたウィザードこと明久は、その後襲われていた少女の身の安全を確認し、その後駆け足で芳佳の家へと向かった。家に着くと玄関にはぷんぷんと言う擬音が似合うように怒っていた。


「おそ〜い!なにしてたの明久くん!皆待ってたんだよ!」
「あはは…ごめんごめん、ちょっと人助けをしててさ……」
「…もしかしてファントムが?」
「うん。そうだよ」
「そっか。それならしょうがないね」
「ありがとう。何たって僕は、最後の希望だからね。いこう、芳佳」
「うん!いこう、明久くん!」


明久と芳佳は、笑顔で家のダイニングルームへ向かっていった……。


吉井明久。この物語の主人公にして、指輪の魔法使い。
そして、この世界を救う戦士の一人…『仮面ライダーウィザード』である……。


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