lack 頭上からそんな言葉が降ってきて、顔を上げる。 「あぁ英輔」 そこには、おそらく女の人が去った方を向いている親友の横顔があった。 「やっぱ透はモテるよなぁー」 隣に座り込みながらそいつ、斉木英輔が言う。 「そんなことない。大体その、かっこいいって…俺のことなの?」 「ぜーったい、そぉだって!透イケメンだもん」 英輔がニカッと笑う。イケメン…そんな自覚は、無い。 実際、大学生になった現在でも誰とも付き合ったりしたことなんてないままだ。 「イケメンって死語じゃ…あ、入場始まったっぽい」 「おー、はいこれ!透のぶん」 差し出されたチケットを受け取る。自然と口角が緩んだ。 「ありがと英輔。すげー、楽しみ…」 英輔は嬉しそうな、幼い子供を見守るような温かい笑顔でそれに応える。 そう、俺達は今日”イディオット”のライブを観に来ていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |