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「浴びてこない?」
「え」
…やっぱりおかしい。
きっとこれは、シャワーを浴びて来い、という意味の言葉だ。
つまりは…、なんて無粋な考えが俺に浮かぶ。
そりゃあ、バンドマンがファンを食う…なんて、よくあることなのかもしれない。
実際、英輔からそういう話を以前に聞いた覚えもあった。あまり感心出来ない話だ。
―けど…まさか…
だけど。
俺、は。
俺が余程困惑した顔を見せていたのか、諏訪さんは可笑しそうな表情でこちらを見ていた。
そして、俺の肩に手をかけた。触れられた身体がびく、と弛緩するのがわかる。
相手は自分の大好きなイディオットのヴォーカルで、無下な態度はとれなくて…。
「な、」
俺が下手な笑顔を作って、なにか答えようと口を開いたときだ。
に、と諏訪さんの口の両端が上がる。
肩にかかる手に力が込められた…
気が、した。
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