この春私は卒業します。小学校から通ったこのポップン学園を…。 ポップン学園は神様直々で運営されています。 小学校から大学まで一貫されたエレベーター式の学校。 小学校と中学校は絶対通わなければならなくて、高校と大学は希望者のみ上がれます。 そういう仕組みの所でした。 私は小学校からここでした。 そして中学に上がった私は、ある人を好きになりました。 13歳の「好き」はとても子どもじみたものだったのかもしれません。 ひよこの「刷り込み」みたいなものだったのかもしれません。 だけれど…… 「先生!」 「うへ?おお、潤子。卒業おめっとさん」 「アリガト」 先ほどまで体育館で卒業式をしていました。 いまはそれぞれが思い思いに別れを惜しんでいます。 大学までエレベーター式とは言ったけれど、大学だけは別のところに建っています。 だから、校内で会うことは出来ないのです。 「早いもんだなぁ。お前知ってから5年か」 「あ〜あ、5才も歳をとったのかー。もうすぐで『さらば10代』だよーオバサンだよー」 「若いくせに何言ってんだバカ」 ニカっと笑ってくれる人。 私はこの笑顔にも弱い。 片想い歴5年… 中学にあがって、本格的に授業が開始された初日この人の授業がありました。 英語の授業で、先生は……DTO、その人。 「潤子せんぱーーい!!」 私を呼ぶ声に振り返れば…仲良くした後輩たち。 「うわーん!せんぱーーい大好きぃ!!」 「あは、リサに好きって言われちゃった」 「ホントだもんっ!」 号泣しながら抱きついてくるのは2学年下のリサ。 彼女は妹みたいな存在でした。 ぐるっと見渡せば、女の子は全員泣いています。 リサ、リュウタ、ハヤト、サイバー、ビス子、サユリ…。 「……ったくよー…なんで海外の大学に行くんだよ…」 「最後まで先輩の私に対してタメ口?リュウタ」 「ぜってぇ手紙くれよっ?」 「え、手紙?海外でもメールは届くよ」 「手紙の方が貰った時嬉しいし…」 意外だ…。 「異様にここ人だかりになってるなあ」 「あ、先生!」 ひょいと輪の中に入ってきたのは中学の頃、担任だった先生。 高校に上がっても教科でお世話になった教師。 そうだ、彼にお願いしてみよう。 泣かない内に……頼まなきゃ…。 明るく振舞えるうちに―――。 「そうそう、先生。写真お願いしていいですか?」 「いいよ」 「やった!みんな並んで並んでホ〜ラっ、DTO先生も!」 「え、俺も?!魂抜かれっからヤダころ」 そういう子どもっぽい所も…全部……全部が愛しい…… 好きな人と記念写真を撮ってみました。 気取ったポーズ考えながら、並んでみました。 何度、貴方の隣で歩きたいと思ったか…、貴方は知らないでしょうね。 『卒業式』というイベントに便乗して、雰囲気に便乗して…腕を組んで空想を写真に残しました。 短いけれど、感激でした。 逢いたい…けれど……逢えない…… 私は海を越えてイギリスへ旅立つのだから…。 「あーあ、魂抜かれたー寿命が縮んだー」 「縮みませんって」 「……向こうでの生活は大丈夫か?」 「話しとぶねえ。大丈夫よ、なに、心配してくれてるの?」 「英語力をな」 「うーわーー語学方面ですかーーー」 でも心配してくれて嬉しいと思う私が居ます。 後輩たちはLHRがある為に教室へ戻ってしまいました。 「でも潤子には驚かされたな。始めの内はマジで英語力低かったのによ」 「がんばったも〜〜ん」 「補修でいじるの好きだったのに、いつの間にか学年で上位に入るほどになってんだもんなあ」 本当に英語力がなかった私は、補修でDTO先生にみっちり仕込まれていました。 その補修さえも嬉しいと思った私は、彼の教えのほぼ全てを飲み込み、驚くほどの速さで英語力を付けていき、 終いには学年でトップスリーに入る実力をつけていました。 「私の潜在能力のお陰だねえ」 「俺の教え方が上手かったんだ」 「いんや、私自身のお陰よ」 「感謝の気持ちはないのかお前はっ」 「きゃあ〜くるしい〜〜」 その逞しい腕をわたしの首に絡ませてプロレス技をかける貴方。 おちゃらけてみるも、私の鼓動は早まるばかり。 本当は感謝で一杯です。 その内、打ち上げメンバーに呼ばれて私はとうとう別れの時を迎えてしまいました。 「んじゃあ向こうでの生活頑張れよ」 「…………」 「? 潤子?」 いつの日か……もっと、特別な声で呼ばれたい… 「……はいっ頑張ります!パソコンのメアド変わってないよね?」 「あ、ああ。変わってないけど」 ああ……駄目…泣きそうだし………告白しちゃいそうだし… 「英文で送ってやる…っ」 「ほう?英文で送り返してやる」 ニヤリと笑ってそう言い返してくれる貴方に私はやっぱり惹かれています…。 いつか また 逢いましょうね。 |