最果ての剣 ★ 七「もう、怖いなあ。そんな顔しないでよ。」 陸の前で少し屈むと、花が舞うような柔らかい笑みを浮かべた。 七「如月陸君、だよね?」 陸「え?」 七「ビ〜ンゴ。」 すっ、と陸の頬を撫でると、真っ黒の頭を優しく叩いていた。 奏「なにが?」 七「うん、会長に言われてね。」 乗せていた手を下ろしながら立ち上がった。笑みを浮かべている顔が、ゆっくりとこちらに向く。 七「編入生が来るから見つけたら案内してやってね、って、」 奏「他人事かよ。」 この場にいない人物へ呆れるように言う。 あいつ会長だろ?ていうか、七瀬は生徒会じゃねえし。たいした仕事も無いのに… 七「奏に言っといてって頼まれたよ。」 奏「はあ?」 思わず間抜けな声が出た。 なんで俺?七瀬はともかくなんで?俺生徒会も何も入ってないし。 七「まあいいじゃない。そのまま案内しちゃってよ。」 奏「…仕方ねえな。まぁ、理事長に頼まれてたから、初めからそのつもりだったけど。」 会長様を思い浮かべる奏と七瀬の表情は、変に苦い笑みだ。 生徒会長の酷い扱いには慣れてる。むしろ、人を使ってこそ会長だと思う。 てかあの人が素直に人を案内してるほうが怖い。 陸「…あの。」 小さく呼んだ陸を見れば、俺のブレザーをちょんと掴んでいた。 奏「どうした?」 陸「…僕、迷惑でしょうか?」 不安げに呟く陸を七瀬が不思議そうに見た。 七「そんなわけないじゃないの。」 奏「迷惑だったら案内なんかしねえよ。嫌々やるなんて、俺そんな器用じゃないし。」 陸「…はい。」 先程までこちらを見上げていた顔は床を見つめていて、表情は分からない。出てきた声音もなんとなく弱いものだった。 何がどうしたのかは、俺には分からないけど、こちらに向けられといないその顔は、笑っていて欲しいと思った。 _ [*前へ][次へ#] [戻る] |