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プ ロ ロ ー グ





金色に輝く球体が世界を見下ろす。
空には闇が広がり、猫が地上を逃げる。




【プロローグ】




月が照らす地…マライウタウン。

通称マライウは大きな市場を中心に五つのブロックに囲まれていた。
西ワンブロックから南ファイブブロックに囲まれたマライウは、綺麗な円の形をしている。
市場から各ブロックに伸びる大通りは市場よりは薄暗く、朝仕入れた野菜を並べ、カフェや工具屋に服屋などレンガでできた建物があった。

その大通りの建物の隙間…路地裏へとノラ猫は逃げ込んだ。

外の明かりとは反対に、空上のように暗闇に包まれた路地裏。
そこに住み着くのはノラ猫だけではなかった。
建物の裏口を入口として営業している怪しげな店もいくつかある。
ドアの上に固定された今にも消えそうなランプが、すぐ隣にある看板の文字を目立たせる。

『天国への入口』
‐Door to Heaven‐


…天国?よく言ったもんだ。


ノラ猫は走り書きされたその文字を一瞥したあと、今にも倒れそうな足つきで進む。
昔、この扉の中に沢山の銃を持った男たちが出入りするのを見ていた。
そこは、極楽への近道じゃない。
ただの殺し屋の住処だった。
依頼にくる者は、小さな子供から老人まで様々。
貧乏な者からも裕福な者からも仕事を引き受け、金をもらう。
それでしか、殺し屋たちも生きてはいけないのだろう。
この路地裏には色々なワケアリを持った者たちが集まる。
だが、表にいるよりは安全だった。


…あんな、表上だけの理想郷なんか…。


ノラ猫は下唇を軽く噛み、腹部の激痛からくる目眩を取り払う。


…まだ、死ねない。
こんなことで、死んでたまるか。





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