純愛小説 ページ:7 しばらく地面を探すと胸ポケットから急に飛び出した鉛筆は、少し地面に削られ、ぼろぼろになりながらも生きていた。 「かな子……」 物だって死ぬ。 それを、痛感させられた。 「かな子、ごめん」 鉛筆は私の手の上で弱々しく呟いた。 「今ので内臓が、折れたかもしれない、もう、俺は……かな子の鉛筆にすら、なれない」 非情な現実。 まだ新品そのものだった彼。 「かな子」 名前を呼ばれるたびに、ぎゅっと胸が痛くなった。 涙が頬を伝う。 「まだ、わからないじゃない! それに、たとえそうだって、コンパスだって、素描だって……あなたは、あなたよ、ずっと」 鉛筆として生きる彼も素敵だった。けれど……鉛筆としての生き様が変わっても彼は変わらない。 ただ、私はもう彼を削らなかった。 ペンケースの、内側のポケットにこっそりしまいながら、今も一緒。 [*前へ][次へ#] |