純愛小説 ページ:1 椅子と付き合ってるなんて、誰にも言ってない。教室のそばにある、小さな椅子。 バレンタインのときに、チョコレートを乗せたらゆっくり溶けて、食べてくれた椅子は、ほんのりと染みが残っている。 今年はどんなチョコをあげようかな。 私は椅子が好きだ。 窓からわずかに日が差し込む時間に、いつもの特別教室に行くとそれは定位置に置かれてる。 心地よい日差しを浴びながら、佇んでいる。 椅子が気になり出したのは入学して少しした夏。 みんなが汗をかきながらばたばた走り回る中でも、椅子は涼しそうに、定位置に佇んでいた。 笑っているか泣いているかはわからない。 けれど、表情のない、何も言いさえしないその姿にときめいた。 彼の足にはいつも、誰かの雑巾がかかっている。 真新しい白い雑巾。 それを見るとなんだか胸がくるしくなる。 私が雑巾を縫えたら、足にかけてくれるだろうか? [次へ#] |