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小説
ねぇ、ダーリン(ヨハ→十)


 ふ、と思った。ヨハン達があまりにも当たり前のように日本語で会話しているから頭からぽんと抜けていたが、ヨハンは外国人ってやつで英語もペラペラなんじゃないか。と。


【ねぇ、ダーリン】


「アニキ、とうとう勉強する気になったんッスね!」
「いや、全然」
「ええっ」
「それならどうして突然英語の話になったんザウルス?」
「いやー、ヨハンって最初から日本語上手だったのかなーって思ってさ」
 翔と剣山が一瞬考えたが首を横に振った。
「いくら頭良くても日本語を勉強しながらだドン」
「最初からできるなんてチートだもん」
 それもそうか。なんとなくヨハンを見ているとずっと日本語で喋ってたか最初から日本語が上手だったんじゃって気がしてくるんだけどなぁ。
「どうやって日本語勉強したんだろうな」
「そんなに気になるんだったら聞けばいいじゃない。アニキ今日もどうせ夜通しヨハンとデュエルするんでしょ」
「本人に聞くのが一番はやいドン」
 これまたそれはそうだ。
さっそく今夜にでも聞いてみよう。


「ということで」
「なにが『ということで』なのかわからないぜ」
「ヨハンって日本語の勉強はどうやってやったんだ?」
 レッド寮の狭い部屋にヨハンが来るのがいつものことになったのはいつからか。
デュエルが好きな時にできればいいから特に深く考えたことはないけど、アカデミアに来てからずっとヨハンは夜になったらここへ来ているような気になってしまうんだから不思議だ。
「どうって普通だぜ? DVD見たり本を読んだり」
「普通の勉強と一緒なんだな」
「当たり前だろ?」
 なんとなく想像つかない。
ヨハンが英語を喋っていて、日本語に四苦八苦している姿を思い描こうとしてもダメだ。
「英語が恋しいとかはなんないの?」
「特にならないかな」
「なあ、ちょっと英語喋ってくれないか? ヨハンが英語喋ってるのが上手く想像できない」
「ああ、いいけど……」
 俺にもわかりやすくゆっくりと喋ってくれる。
が、なんて言ってるのかちんぷんかんぷんだ。時々俺の名前っぽい響きが混じってるから俺のことを言ってるんだろうけどさっぱり。
 ヨハンにとってはこれが当たり前なんだよな
「なんか英語喋れるってかっこいいな!」
 意味は全くわからなかったけど。
「そうかぁ?」
「ヨハンイケメンだしモテモテなんじゃねぇの?」
 それまで笑っていたヨハンの目が真剣に細められる。
あれ、俺なんか変なこと言ったか?実際モテモテだよな。
「どうしてそう思うんだ?」
「かっこいいし……」
「うん」
「頭もいいんだろ?」
「まぁな」
「あと、英語もできるし」
 ふは、とヨハンが笑う。
 たまにヨハンはこうして真面目な顔になる。その切り替え?がよくわからないんだけど、イケメンの真顔って迫力があるんだよな。心臓に悪いぜ。
「そんなに英語喋ってるオレがかっこいいか?」
「すっげーかっこいい!」
「ふぅん」
 目を細めて笑う。この表情は見慣れてなくて、さっきとは違う意味で心臓がドキドキする。なんでか頬があつくなって、そわそわする。
「I love you」
 少し高くて耳心地のいい声がゆっくりと、吐き出した言葉は俺だって意味はわかるものだった。
え、なんて間抜けた声を漏らした俺にもう一度ヨハンが俺の手に触れて言う。
意味は、わかる。けど。俺を見て、ヨハンが言う意味は……。
「オレは十代が好きだぜ。愛してる。十代は?」
 ご丁寧に日本語でも言われて俺の頭はショートしたまま動かない。
すき、好き。愛してるって。それは──





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