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相互記念(杏sama)





ピンポーン。

暑苦しい空気の中でテスト勉強なんてしていると、景気良く鳴らされたインターホンの音に思わず顔を顰めてしまう。

しかし今この家にはオレ1人。居留守を使ってしつこく鳴らされでもしたらそれこそ辛い。
ので、だらだらと立ち上がりだらだらと玄関に向かった。











ドアの向こうに居たのは。











「よお、梓ちゃん」
「‥阿部さんじゃないですか」


ぐったりとしている自分を見て何が面白いのか、目の前の阿部はいつもの嫌な笑みを浮かべて。


「‥約束してたっけ?」
「いや、梓ちゃんが数学わかんなくて苦しんでるだろうと思って来てみた」

でも他にも苦しい原因があったようだな、と笑った阿部に反論する気力は残っておらず、半ば投げやりに中に通した。







「あ。これお土産」
「‥‥ケーキ?」


差し出された箱はどうみても近くのケーキ屋のもの。不思議に思って聞けば、たまたまもらったケーキの割引券を見て、オレの誕生日が祝われずに過ぎていたということを思い出したらしい。

半額のケーキ。しかもオレの誕生日は何ヶ月前だったんだ。



‥‥それでも、阿部に気にかけてもらえたという事実は嬉しいものだった。これぞ末期。



「チョコとイチゴ、好きなの取れよ」
「んーじゃチョコもらう」


阿部が皿に乗せてくれるのを待ちながら、その頬を伝う汗を見つける。そうだ、扇風機くらいつけようじゃないか。










「やっぱあそこの美味いなー」
「‥‥甘い」


久々のケーキを頬張りながら呟くと、甘いものは得意ではないらしい阿部からこの台詞。思わず苦笑いで返した。

扇風機を付けたと言っても生暖かい風が来る程度で、相変わらずオレ達は汗だく。何だこの光景。



いや、阿部の火照った顔とか口の端についたクリームを舌で舐め取る仕草とか、オレにとってはケーキも合わせて御馳走ですってなもんだが。

そんなことを考え始めてしまったオレ、もうこれ暑さの所為にしちまって良いよな?



「‥‥なあ阿部」
「なに?」
「オレもイチゴ食いたい」
「‥‥‥」


ちょうど、最後に取っておいたらしいイチゴを口に運んだばかりの阿部に言えば、明らかに嫌そうな顔で眉間に皺を寄せた。


「それで良いからさ」
「‥‥ん、ッ?!」


薄い唇に挟まれた真っ赤なイチゴを指差して、距離を詰めれば抵抗される前にキスを仕掛けた。



「ん、んん‥っ‥‥!」
「‥‥甘酸っぺえな」


ファーストキスじゃあるまいし、と笑えば盛大に睨まれたが、そんなことでは退けない。





「さーて、美味いケーキも食い終わったことだし、」
「‥‥そろそろ勉強すっか」
「そりゃないだろ?」













いただきまーす。


にこやかに告げて、暑さ以外の原因で真っ赤になった阿部を抱き寄せたら、諦めたような溜息をつきながらも抱き着いてきた。



夏休みも来てないってのに、まだまだ熱くなりそうだ。







+−+−
杏さまへ!遅れてスミマセン!
裏の手前で自重してみました(笑)
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あきゅろす。
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