好きと、嘘を 指定したファミレスに着くと、既に目的の人物はやって来ていた。 目が合うと、少し睨まれた気もしたけど気にせずに同じテーブルにつく。 こんにちは、なんて軽く挨拶したら、すげー警戒されてて笑えた。 「何で、オレの番号を」 「あれ、隆也に聞いてねーの?」 てっきり全部話されたと思ってたのに。でも、怪訝そうな表情を見せる相手にしめたと思った。 これは使える。 「どういうことですか?」 「オレと隆也な、ヨリ戻したんだよ」 「‥‥!」 嘘だ、と顔に出して動揺している相手に心中でほくそ笑みながら、畳み掛けるように続ける。 「もう伝えてあると思ってたんだけど。お前とは、別れるって」 「‥‥それって」 「あ、隆也優しいからな‥‥言えなかったのか」 ちらりと花井を見ると顔面蒼白。あれ、ちょっとやり過ぎたか? カワイソーに。でもまあ、仕方ないか。オレのためだし? 「‥‥嘘、」 「だと思うなら隆也に聞けば?」 「‥っ‥‥」 「昨日、仲直りの一発もヤったしな」 ニヤリと笑ってとどめを刺す。花井の肩がビクリと震えた。 「‥‥なんで」 「は?」 「なんで阿部は昨日、あんな雨の中1人で泣いていたんですか」 あの雨の中?まさかアイツ、帰らねえで泣いてたわけ? 「どうしてもお前に挨拶したいっつーから行かせたんだよ」 ホラ、こんなに堂々と言えば嘘も本当になる。見ろよコイツの不安でいっぱいな顔。 すべてはオレの思い通り。 「‥‥とにかく」 「?」 「今日はもう帰ります」 おう、と軽く手を振ると、すたすた去って行った。 さっさと帰れよ花井梓。 それで一刻も早く、オレの隆也を返してくれ。 . [*Back][Next#] [戻る] |