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ハートの修理



阿部が落ち着いたのを確認してから、手を繋いで駅まで歩く。

駅に着くとさっき帰ったはずの栄口と水谷がいて驚いた。

雨のせいで電車が遅れているらしい。

結局4人で帰ることになり、礼も兼ねて2人を家に呼んだ。




















「おじゃまします」
「まーす」
「ただいま」
「‥‥ただいま」



水谷は勝手に入って行って、栄口も後に続いて行った。ふと横を見ると阿部が立ち尽くしていた。


「どうした?」
「‥‥オレ、ずぶ濡れだ」
「ああ。‥‥タオル持ってくるから、風呂入っちまえよ」
「うん」



頷いて阿部は脱衣所へと行った。体も温めないといけないから、ちょうど良いだろう。
















「阿部何か言ってた?」
「いや、何も」
「そっか‥‥」


水谷が残念そうに呟いた。栄口が苦笑いしながらその頭を撫でて、こちらを向く。



「ケガとかはないの?」
「うん。どこも痛くないって」
「なら少しは安心。‥‥ねえ」
「ん?」


首を傾げつつ栄口を見る。
視界の端に撫でられながら眠りにつこうとしている水谷を見つけ、お前は犬かとツッコミたくなるのを抑えた。


「阿部が言いたくないなら無理に聞かないであげて」
「‥‥わかってるよ」
「それと、」


言いながら立ち上がり水谷を揺すり起こす栄口をじっと見る。


「阿部の元恋人がこっちにいるんだ」
「阿部の?」
「そう。ほら、1こ上で武蔵野のピッチャーしてた榛名って人」
「‥‥その人が、何かしたのか」
「わからないけど、何か関わってる気もする。昔色々あったみたいだから」



気をつけてあげて、と未だ寝呆けている水谷の手を引く栄口に頷いて、玄関まで見送りに出た。














ぱたん、と閉まったドアを見つめる。

栄口には世話になりっぱなしだ、と頭を掻きながらこれからのことを考えた。

阿部は何も言わないだろうから、オレはそれを受け止めよう。




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