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短編置き場?
第1話
ひっそりと暗い部屋の中で一人の少女が涙をながしていた。
そこで彼女を中心に魔法陣が浮かび上がる。
突然のまぶしさに少女が目をつむっていると。
声が聞こえてきたのだ。
その声の主を見ようと目を見開くといかつい背の高い男性がたっていた。

「余のマスターはお主か?」
「はえ?」

男性の言葉に少女は思わず聞き返してしまう。

「……だから訊いておろうが。貴様が、余のマスターで相違ないのだな?」
「は? えっと……」

 
はやては唐突な現状に、必死に頭を回転させていた。冷静になれ、とまだ十歳にも満たない少女が自分に言い聞かせていた。
両親が亡くなり、独りになってまだ日も浅い。そんな中、突如として現れた謎の大男。
はやては冷静に、いたってシンプルな結論に辿り着く。

「うん。とりあえず…ケーサツや」
「ちょっと待たんかっ!」


大男を無視し、電話をしに行こうとした途端、大男が声で待ったをかける。

はやてはそれでも手を動かしてそのまま止まらない。

巨漢の男は制止を聞き流して車椅子を動かそうとしようしたところではやては浮遊感に見舞われた。

大男がはやての体を大きな手でつかんで、ひょいと軽々しく片手で持ち上げたのだ。


「嬢ちゃん。余を無視して何処に行くつもりだ?」
「何処ってケ―サツや。おじさん、ドロボーやろ」
「大いに違う。闇に紛れて逃げ去るのなら匹夫(ひっぷ)の夜盗。凱歌(がいか)とともに立ち去るならば、それは征服王の略奪だ」


そう言われて、はやては改めて男を見る。燃え立つように炯々(けいけい)と光る双眸の鋭さに筋骨隆々たる体。
確かに、泥棒には相応しくない格好だ。泥棒は、渦巻きのような模様の袋を背負って、頭巾をしているものだった。
はやてはそう思い出し、男をドロボーとは言わない事にした。
だが、ならば目の前の相手は何なのだろうと思ったのか、はやては小首を傾げて男へ問いかけた。

「なら、なんや?」
「うむ。我が名は、征服王イスカンダル!!」


はやては即座に返された男の言葉に再び頭が混乱し出す。

「せ、せいふくおうイスカンダル……いうんか?」
「いかにも!」

おずおずと聞き返すはやてに答える男。

「な、なら何でおうさまがうちにいるん?」
「何でと言われてものう。余は嬢ちゃんに呼び出されたとしか分からんからのう」


不思議そうに聞かれて眉をさげて困ったような様子で答える男。

「わたしが、おうさまをここによんだんというんか?」
「うむ。それは、間違いないのう」


はやてがそう言うと断言するように頷かれた。

「……ごめんな」
「ん?なぜ謝る必要があるのだ?」

突然謝るはやてに不思議そうに見つめる。

「だってわたしがどうやったかわからへんけど、おうさまがすんでたところからちがうところにおうさまをつれてきたんや。あやまるのはとうぜんやろ?」

落ち込んだまま告げるはやてを見て男は…

「がっはっはっはっは!!」
「な、なにがおかしんや!?わたしは……」

まるで弾けるような勢いで豪快に笑い出した大男に、驚くはやて。

「心配せんでもよい。余が来たいと思ったから呼ばれただけだ。
でななければ余がここにいるわけがなかろう? 嬢ちゃんが気に病む必要はない」
「そ、そうなん?」

そう告げて優しく目を細める男に問い返す。

「うむ。さて嬢ちゃんの名前を教えてくれんかのう」
「あ、わたしははやて。八神はやてや」

頷くとはやての名を問いかけるとはやては笑顔で名乗る。

「ほう。良い名じゃのう」
「うん。わたしもきにいってるんよ」

寂しげな少女に家に一人の大男の登場で少女は、いやはやては笑顔を取り戻した。

余談だが隣近所から苦情があったことを記しておく。

〜〜〜☆〜〜〜

「サーヴァント・セイバー。召喚に応じ、ここに参上した。君が我が主で宜しいか?」

突然の出来ごとにワケがわからない。それが少女の感情だった。
自分はただ、いい子でいなくてもいい相手が欲しかった、だから神様にお願いしたのだ。

(私が本音を言い合える『誰か』が欲しい)と。

いい子でなくても傍に居てくれる誰かが。
父が入院している現在、少女は家族の邪魔にならないように『いい子』を懸命に努めていた。
でも、少女はまだ子供だ。甘えたい時やワガママを言いたい時もある。
だから、本音を言い合える相手が欲しかった
それが少女の偽らざる気持ちだったのだ。
少女自身叶うとは思ってなかった。

「でも、こんなのはないよ……」

そんな願いをした途端、甲冑を身にまとった騎士が現れたのだ。
驚きよりも残念と言う面持ちの少女に対し、騎士の男性が少女に問いかける。

「尋ねたい。 貴方が僕の主(マスター)で相違ないかな?」

「……違うよ。マスターじゃない」

幼い少女に、マスターの意味は理解できなかった。
でも、それは自分の求めるものじゃない事だけは、なんとなく感じ取っていた。
そう思っての返答は騎士を軽く驚かせた。
騎士は、幼い少女の言葉に先程までの表情ではなく、
どこか不思議そうな顔をして少女を見つめた。
では、なんなのですか?というような視線が少女にくる。
その視線を受けて意を決したかのように告げた。

「―――私は、なのはは……あなたと、ともだちになりたいなの!」

少女言葉に軽く驚く騎士を見て、少女は嬉しく思っていた。
その十分の一でも返す事が出来たと感じ、満足した笑みだ。
そんな少女の笑顔を見て、騎士も笑みを浮かべた。
一度目の召喚は広い庭のような場所からだった、
今回は星光の中、幼い少女に呼ばれた。

驚きもしたが騎士にとってはどうでもいい。
今の騎士にとっては、少女から予想だにしない言葉が返ってきたのだ。
マスターではなく、友人になってほしいと言われたのだから。

「友、ですか……。なら、失礼ですが貴方の名前を聞かせて頂けますか?」

騎士は、自分が出来うる限りの優しい声でそう言った。
その声に少女も笑みを返し、頷いた。

「あ、はい。私はなのは。高町なのはです」

「……なのは、ですか。僕はセイバー。
 セイバーと呼んでください」

こうして少女は、初めての友を得るのと同時に、永遠の友をも得た。
星の光が差し込む部屋に、二人の笑みが輝いていた……。

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