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新・バカ達とちみっこ達と赤姫
第131問 改
次の文章を読み、問に答えなさい。
19世紀の終わり、ドイツの宰相は世界最初の社会保険制度を創設し、貧困者たちの救済を図った。
また、この救済と同時に、社会主義者鎮圧法を制定した為に、この政策は『()とムチの政策』と呼ばれた。

問1 ドイツの宰相と呼ばれたドイツ首相の名前を答えなさい
問2 ()に当てはまる単語を答えなさい

姫路瑞希の答え
『問1 ビスマルク
問2 (アメ)とムチの政策』

教師のコメント
正解です。ビスマルクは政策として、社会保険制度をご褒美ーーーつまり”アメ”として与え、一方で社会主義者鎮圧法という”ムチ”で人々を叩いたというわけです。
甘やかすだけでもなく、叩くだけでもない。
政治のみならず、様々な場面で用いられる手法ですね。


土屋康太の答え
『問1 エリザベス』

教師のコメント
ムチ→女王様→エリザベス女王
最近君の考えが理解できるようになって、先生はとても複雑な気分です。

吉井明久の答え
『問2 (糖分)とムチの政策』

教師のコメント
確かに甘いものですが、やや惜しいということにしておきましょう。




「だから、どうしてお前らはそこまで単純なんだ・・・・・」

そして、明久らは補習室の硬い床に正座をさせられ鉄人の監修のもと、補習の問題集をひたすらにやらされていた。

「くそっ。汚ねぇ・・・・! 俺達のお宝を奪ってボコった挙句、今度は職員室で召喚獣を用意して待ち伏せとは・・・・! 教師の風上にもおけねぇ連中だ・・・・・!」
「密かに侵入していたのが、シュウと愁夜のせいでバレたし!」
「吉井、坂本。 無駄口をたたく余裕のあるお前らにプレゼントだ」
「「げっ!!」」

ドス、と二人の目の前に問題集が追加される。
これはもう今日中に終わらせるというのは物理的に不可能であろう。

「酷いっ! このチンパンジー、人間じゃない!」
「さてはこのチンパンジー、俺達を家に帰らせない気だな!?」
「そういえば、坂本は夏休みの課題の提出がまだだったな」

更に一冊ドスン、と問題集が積まれる。

「提出が遅れている分の利子だ。 一週間遅れるごとに更に一冊追加してやろう」
「うぎぃぃーーーーーっ!!」
「ほっ、僕は頑張って書いていてよかったよ」
「みんなで勉強したことが良かったんだろ」

ほっと胸をなでおろす明久に龍星は苦笑いしながら言う。

『吉井も坂本もバカだな・・・・。 あのチンパンジーに逆らうなんて』
『俺達みたいにおとなしくチンパンジーの言うことに従っておけばいいものを』
『無駄な抵抗をするからチンパンジーに目をつけられるんだ』

「そういえば、他の連中、全員課題を提出していなかったな。 安心しろ。全員平等に利子をくれてやる」

『『『うぎぃぃーっ!!』』』

未提出の夏休みの課題、補習の問題集、追加の問題集、とドンドン課題が増えていく。

「あの野郎、今に見れやがれ・・・・!」
「・・・・・この恨み、忘れない」
『月の無い夜道には気をつけろってんだ・・・!』
『見てろ、そのうち靴に画鋲を仕込んでやる・・・!』
『それなら俺は、鉄人同性愛者説を学校中に流してやる・・・・・!』


「更に一冊追加だ」

『『『うぎぃぃーっ!!』』』

急襲に加わらなかった、こっそり侵入した奴らを除いたメンバーはEクラスで一緒に授業を受け、Fクラス男子生徒(龍星・秀久・和明・秀吉・直貴・湊斗等を除く)は補習室で軟禁状態という大惨事。
たたでさえ暑苦しいFクラスメンバーの中から、数少ない希望である女子を全員外された上に講師は鉄人ともなれば、僕らの恨み募るばかりだ。

「まったく、つくづくお前たちは・・・・。 体力が有り余っているようだが、そういうものは運動で発散しろ。幸いにも近々体育祭もあることだしな」

鉄人は嘆息しながらつぶやいた。
二学期が始まるや否や、いきなり実行される大きなイベント、文月学園体育祭。
長い夏休みでたるんでいる気持ちを身体を動かすことで引き締めさせようというイベントだ。
どうせ休みボケで授業をやっても身が入らないのだから、先にイベントを消化しておきたい、といったあたりが学園側の本音だろう。
あの学園長の考えそうなことである。

「さて。 俺はお前たちが暴れた職員室の後始末をしてくる。 全員サボらずに課題をやっておくこと。
脱走したら・・・・・地獄を見せてやる」

不穏な一言を残し、鉄人は補習室を出て、ご丁寧に外から鍵をかけて去っていった。
脱走したらなにも、監禁体制が万全に整っているじゃないか。

「そういや、すぐに体育祭か。 体育祭ってことは・・・・アレがあるな」

雄二がニヤリと笑みを浮かべる。

「そうだね。 アレがあるね」

明久も同じように口元が緩んでしまった。
見てみると、周りの皆も同じように口の端を歪めている。
全員考えることは同じってことらしい。

「思えばこの五ヶ月。 いや、入学以来の一年五ヶ月。 俺達はこの学校の教師陣には随分と酷い目に遭わされてきた」
「廊下に正座させられたり、補習室に軟禁されたり。写真を没収されたり、酷い設備の教室に押し込まれたり、学年の男子の半分が停学になったりしたよね」

この場にいる全員が「うんうん」と大きく頷く。
ここにいる仲間は皆同じような境遇に置かれてきた同志達である。
舐めさせられてきた辛酸も大差はない。

「だが、もうすぐやってくる体育祭。 そこで俺達はーーこの学校の教師達に復讐することができるんだ!」

気分が盛り上がったようで、雄二は立ち上がって拳を振り上げた。

『おう! やってやろうじゃねぇか!』
『去年は勝手がわからなかったが、今年はそうはいかねぇ!』
『あの鬼教師どもめ・・・・! 目にものを見せてくれる!』

至るところから威勢のいい声があがる。
先生達を恨む気持ちは皆同じ。
今日の一件もあって、明久らは教師勢の横暴な行動に対し、報復攻撃を心に誓っていた。

「いいかお前ら! こんなチャンスはまたとない! 今までの学校生活で、罵倒され、虐げられてきたこの鬱憤。 この機に晴らさずしていつ晴らす!」


『そうだっ! 恨みを晴らせ!』
『この機に乗じて仇を討て!』
『ドサクサに紛れてヤツらを痛めつけろ!』

そう。こんなチャンスは滅多にこない。
仇敵とも言える先生たちを、交流試合を隠れ蓑を使って攻撃できるという、復讐のチャンスは。

「全員今は牙を研げ。 地に臥し恥辱に耐え、チャンスの為に力を溜めろ。
今この時は、真に敵を討つ時期じゃない。
鬼教師どもに復讐するべき時は体育祭。
親睦会という名の下に、接触事故を装って復讐を果たす。
いいか、俺達の狙いはーーー」

『『『生徒・教師交流野球だ!』』』

全員が声を揃えて拳を掲げる。
それを聞いていた龍星は頭痛に悩みながら嘆息して隣りでネギを研いでるぷちに声をかけた。

「はあ・・・・・せりかさん。go」
「かっかー!」
『あーーーーーー!!』

そしてそのまま龍星は付き添いぷちに指示を出す。
ネギを持ったせりかさんが明久たちの尻にネギを穿つ。

〜〜〜☆〜〜〜〜

『連絡事項

文月学園体育祭 親睦協議
生徒・教師交流野球
上記の種目に対し本年は実施要項を変更し、競技に“召喚獣を用いる”ものとする。

文月学園学園長 藤堂カヲル』


「まあ、こうなるよな」
「・・・・・・(おばあちゃんらしいね)」
「ここまでとはいっそ清々しいですがね・・・」
「わきゅ〜?」

珍しく起きて登校できた龍星が掲示板を見てつぶやき、芹香と晃希は苦笑いを浮かべている。
白姫は不思議そうに小首をかしげていた。

「多方、あのばばあ長のせいだろうな」
「ヒデくん、そのいい方は失礼だよ!」

悪口を言う秀久につぐみが注意する。
そっぽいて素知らぬ顔をする。
それに嘆息する龍星とつぐみと芹香。


「ん? 龍星、何見て……何ぃっ!?」
「あっ、おはよう龍。そんな所で……ええっ!?」

登校してきた雄二と明久が、掲示板に張られた連絡事項を見て声をあげた。

「あーらら、連絡事項で先手を打たれたようだな。
まあ、学園長にはお見通しということかな?」

見ていた結香は苦笑いを浮かべている。

「おいおい、これはねーだろ」
「学園長のいたずらもすごいね〜」

愁夜も登校すると連絡事項を見て顔をしかめていた。
クリスはけらけらと笑っている。

「明久、和明、わかってるな」
「もちろんだよ、雄二」
「俺もこれは気に食わないしな、いいぜ」

雄二に声をかけられて頷く明久と和明。

「「え、ちょ・・・・どこに行くきなの!?」」

それに気づいて声をあげるつぐみとひばり。
だが、聞こえていないのか、そのまま去っていった。

「やれやれ、追いかけるか」
「・・・・・・・(そうだね、りゅうくん)」
「お兄ちゃん、あたしも行くよ」
「「なら、私も」」

龍星がつぶやくと同意する芹香。
つぐみとひばりと結華も挙手して龍星達と一緒にいくと宣言する。
そしてそのままで龍星達は走って明久達を追いかける。

「わきゅ〜・・・・・秀久さんは襟首つかまれてましたの」
「巻き添えにされたようですね」

龍星達を見送った白姫と晃希はさきほどの光景を思い出してぽつりとつぶやいた。


所変わって、学園長室前。

「「ババァーーーーっ!!」」

学園長室の扉を開け放ち、明久と雄二は同時に叫び声を上げた。

「なんだいクソジャリども。 朝っぱらからうるさいねぇ」
「どういうことか、説明しろ。妖怪」

耳を押さえて顔をしかめる学園長に、和明がつかみかからんばかりの勢いで詰め寄る。

「どうして今年から急に交流野球で召喚獣を使うなんて言い出すんですか!?」
「そうですよ、これだと先生たちを痛めつけて復讐できないじゃないですか!」
「……明久、今言ったセリフがそのまま、変更の理由になると思うんだが?」

明久のセリフを聞いて後からきた龍星が呆れ顔でツッコミをいれていた。


「この野球大会の為に、Fクラスが故意に見えないラフプレーの練習に余念がなかったか、俺達がどれだけ努力を重ねてきたのか、妖怪は知らないから・・・・だから、そんな冷たいこと言えるんだな」
「その努力は別の方に向けなクソガキ」

努力とは聞こえはいいが、よくない努力なのは確かである。
つぐみ・ひばりが呆れた表情を浮かべて明久達を見ている。
龍星と芹香は嘆息していた。


「けっ。この変更、どうせまた例のごとく召喚システムのPRが目的だろうが……肝心のシステムの制御は出来るようになったということかね?」
「そうだな。野球ともなれば召喚フィールドの拡張、バットやグローブ等の細かな設定に、ボールっていう仮想体の構築。他にも挙げればキリはないが、これまでの戦闘の様にはいかないだろ?」
「もしかして、ババァが調整に失敗して、偶然野球仕様になったのを都合よく利用しようとしてるんじゃ?」
「バカ言ってんじゃないよ! さっき坂本が説明したように、それらの事柄は完全に制御できなければ出来ない事で、偶然で制御出来る事じゃないさね!」
「「「いや、試験召喚システムは元々、科学とオカルトと“偶然”で成り立ってる代物だろ(ですよね)?」」」
「……相変わらず可愛げのないクソガキどもさね!」

明久・雄二・和明のツッコミに、学園長は青筋を浮かべながら抗議。

「全く……だが分かっただろう? 今はもう完全に制御は出来てるさね」
「でもそれってつまり、上手く行ったから皆に見せびらかしたかったって事じゃ……」

明久の発言で、学園長の表情が固まった。

「わかりやすいなおい」
「ち、違うさね! これはあくまで1つの教育機関のおさとして、生徒達と教師の間に心温まる交流を……」
「お言葉だが戦国学園長、発言がFクラス臭いぞ(笑)」
「お前ら……もうちょい発言に気を使え。図星突かれてババァが動揺してるどころか、ショックを受けちまったぞ」
「なんだろう、ここ学園長室なのに、場違いな気がしてきたよ」
「つぐみちゃんも? あたしもだよ」

ぽつりとつぐみがつぶやくとひばりは哀愁をただよわせながら言う。

「いったいどうなっちゃうのかねん?」
「まあ、見てるしかないんじゃね?」
「普通に体育祭もしてもらわないとあかんけどな〜」

クリスと綾香はどこか楽しそうに見ていた。
深紅はけらけらと笑いながらカメラで激写している。


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