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新・バカ達とちみっこ達と赤姫
第119問
「ここの被害は?」

「男子一部、そして女子の過半数が…」

冷静に対処する澪次に尋ねる当夜。

「坂本!仇を・・・! アイツらの仇を討ってくれ!」

「このまま負けたら、散っていったアイツらを申し訳がたたねぇよ・・・!」

「あんなの酷すぎる!」

Fクラスの生徒だけでなく他のクラスの皆までもが涙ながらに訴えてきた。

「雄二、次は俺に行かせろ!奴に恐怖を叩きこんでやるぁ!」

「分かっている! 向こうがそうくるならこっちだって全力だ! 
突入準備をしている者達を全員下げろ! 
こちらからは、ムッツリーニ&工藤ペア、龍星&神埼ペア、
そして当夜&レイナペアの3組を突入させるぞ!」

「「「「「おおおーーーーーっ!!」」」」」


その3組の名前を聞いて教室中に雄叫びが響き渡った。 
彼らならきっとなんとかできると思ってのことだろう。

「さすがだな、雄二。さてと、やつらに恐怖を叩き込んでやんねーとな」
「ああ、こっちだってやりかえさないとな」

龍星の言葉にニヤリと笑う雄二。


「「「「「ムッツリーニ! ムッツリーニ!」」」」」

「「「「「工藤! 工藤!」」」」」

『兄貴!!兄貴!!』

『閣下〜!閣下〜!』

『井鷹!井鷹!』

『姫様〜!!姫様〜!!』

鳴り止まない3組のコールの中、名前を呼ばれた工藤は緊張した様子もなくムッツリーニに近寄って話しかけていた。


「だってさ。 よろしくね、ムッツリーニ君」

「・・・・・・・・・・・・(コクリ)」


頷くムッツリーニにも緊張の色は見られない。 
あのグロ画像を見ても自然体でいられるなんて、やっぱりコイツは彼は只者ではない。

「……(ふふふ♪ あの変態共にはお仕置きが必要だね)」

「ああ、しろ達にお粗末なもんみせやがったからな」

龍星に声をかける芹香に同意する。
芹閣下降臨のようだ。

「頼んだぞ、6人とも。 何としてもアレを突破し、Dクラスをクリアしてくれ!」


雄二がムッツリーニと工藤の目を見て話しかける。 教室の広さを考慮すると、坊主先輩を突破したら残りはチェックポイントだけのはず。 
Dクラスに設置されているのは保健体育だったはずだから、そのままDクラス制覇だって、この6人なら充分期待できる。 
さっきの仲間達にような被害者を二度とださないためにも、二人には頑張ってもらいたい

「う〜ん。 約束はできないけど、一応頑張るよ、坂本くん」


いつもの飄々とした口調で軽く答える工藤さん


「ああ、よろしくな。 ムッツリーニも、いけるな?」

「・・・・・・・・・・・・問題ない」


静かに、小さく頷くムッツリーニ


「・・・・・・・・・・・・あの坊主に、真の恐怖を教えてやる」


そう告げてムッツリーニは工藤をひきつれ、Dクラスに向かった。 
明久達の勝利のために・・・・・・

「皆! もうすぐあの衝撃映像がくるよ! 女子は全員目を閉じるんだ!」


ムッツリーニと工藤の持つカメラが件の場所に近づいていく。 
来ると分かっていても耐えがたい恐怖。 
モニター越しでも叫びだしたくなるほどのプレッシャーだ

「つ、土屋君たちがダメだったら、あとはこちらも対抗してつぐみちゃんとしろちゃんとひばりちゃんがフリフリの可愛い服を着ていくしかありませんね・・・・・・」

「そ、そうね。 それしか手はないものね、 仕方がないわよね」

「いやいや、ここは秀久の女装だろ」

「なんでそうなるんだよ!?」

瑞希と美波は変なことを言い出し、愁夜が秀久をいじると秀久が驚きの声が聞こえる。

『ムッツリーニ君。 あの先だっけ? さっきの面白い人が待ってるのって』

『・・・・・・・・・・・・準備はできている』


そんな教室とは対照的に、目的地へ向かっている張本人たちは落ち着いているみたいだ

「やっぱりまた真っ暗になってる」
「突然現れる方が効果があるのだろうからな。
タイミングを見計らってスポットライトを入れるんだろ」

闇の中でカメラがぼんやりと人影を映す。


「そろそろくるぞ」

「うん・・・・・・っ!」


全員がグッと下っ腹に力を入れて衝撃に備える

【バンッ!】←スポットライトのスイッチが入る音

【ドンッ!】←龍星が大きな鏡をおく音

【ケポケポケポッ】←須藤先輩が嘔吐する音

効果は抜群のようだ。


「て、てめぇ! 何てものを見せやがる! 思わず吐いちまったじゃねぇか!
ってか何写真撮っているんだよ! 撮るんじゃねえ!」

自分で着といてそれを言うのだろうか、普通。


「・・・・・・吐いたことは恥じゃない。それは人として当然のこと」

「くそっ。想像を絶する気持ち悪さに自分で驚いたぜ……。
道理で着つけをやった連中が頑なに鏡を見せてくれねぇわけだ」

きっと彼らもすごい吐き気におそわれてただろう・・・

『ムッツリーニ君。 この先輩、ちょっと面白いね。 来世でなら知り合いになってあげてもいいかなって思っちゃうよ』
『……(それは同感だね。こんな面白い先輩は記事にしないと(パシャパシャ)」

愛子と芹香はにこにこ笑顔でとんでもない発言をのべている。


「ちょっと待てお前ら! 俺の現世を全面否定してねぇか!? 
っていうか生まれ変わっても知り合い止まりかよ! いつまで写真を撮っていやがる!」

「あ、すみません。俺の友人が失礼を言って。
ですがあまり喋らないでくんねーか?、歩く卑猥物先輩」


声を荒げる須藤にニッコリと笑って言う当夜。

「失礼だろ、それが趣味なんだろうから。ああ、そうだ。
女装に理解のある人を紹介するとしよう♪ カモン、ニューカマー根本!」

「純粋な悪意しか見られねぇよ! っておい!
 これは決して俺の趣味じゃないからな!って呼ぶんじゃねー!!」

注意しつつ、召喚する龍星は笑顔で芹香を支えているようだ。

「うふふ〜♪ およびかしら〜♪」

くねくねと腰を動かしながら現れる根本ことニューカマー根本。

「やつに女装のなんたるかを教えてやってくれ」

「お安い御用よ♪ ふふ、良い肉体してるわね〜♪」

龍星に頼まれたニューカマー根本は須藤に近寄り、首根っこをつかんでどこかへと向かう。

「い、いやだー!!?」

逃げようとするが逃げれない須藤の悲鳴が教室ないで児玉する
これでDクラスの強大な障害物は排除された。


「それにしても、工藤さんって意外と厳しいこと言うんだね。 坊主先輩も涙目になってたよ」

「・・・・・・普段愛子はああいうことは言わない」

「となると、誰かの入れ知恵か」

「そう言えば、工藤は突入する前に神埼に何かを聞いておったな」

「ああ、どんな罵倒がいいかと聞かれたからな」

「なるほど。 それならあの罵倒も頷けるな」


いつの間にか戻ってきた霧島と秀吉の言葉に明久達は納得する。 
鏡を見せて気持ち悪さを自覚させたあとで万里直伝の罵倒。 
相手によってはトラウマになるほどのコンビネーションだ


『・・・・・・・・・・・・先に進む』

『多分チェックポイントまであとちょっとだよね』


6人と須藤先輩が消えていった方向に歩き出す。 
パーティションで作られた通路を少し歩くと、その先では三年生らしき人が二人待っていた。 
予想通りさっきの仕掛けに場所を取り過ぎたようで、チェックポイントはすぐ傍にあったみたいだ

「ん? ここのチェックポイントはあの先輩ではないみたいだな」←涼介

「そうだよね。 てっきりあの変態が出てくるものだと思ってたよ」←瑠美

「別にそういう決まりは作っていないからね」

「後のAクラスかCクラスにでもいるんだろうな」

「出てこないってことはないんだよね?」←希

「出てきてくれないと困る。 そのためにわざわざ挑発したんだからな・・・」

「ふ〜ん」←秀久


Aクラスとは言っても、点数表を見る限り屑トリオは一部以外はそこまで突き抜けた点数じゃない。 
他の人を相手にするよりはやり易いと考えて、雄二はあの二人を挑発したみたいだ。 

「まぁ、後のことは後のことじゃ。 まずは目先のことじゃな」

「そうだね」


モニターに視線を戻す。 チェックポイントで対峙している四人はそれぞれ召喚獣を喚び出すところだった
こちらからはレイナと愛子と芹香が呼び出すようだ。


『『『『試獣召喚っ(サモン)』』』』


どうやらレイナのは雪女のようで愛子のはのっぺらぼうのようだ。
芹香のは猫又のようだった。

後ろから見たらどちらも普通の人にしか見えない

「澪次、工藤さんの召喚獣がのっぺらぼうなのはどうしてか分かる?」

「う〜ん、確かなことは言えないが、顔がない、つまり素顔を見せないところに何かがあるのかもしれない。 
あ、そうそう。 怪談話にのっぺらぼうの尻目というものがあってな」

秀久が問いかけると澪次は笑顔で説明してくれた。

「尻目?」

「ああ。 尻目というのは、与謝蕪村の『蕪村妖怪絵巻』にあるのっぺらぼうで、京都市の帷子辻に現れたとされて人に会うと服を脱いで全裸になり、尻にある一つ目を雷のように光らせて脅かしたんだ」


工藤に合ってるような妖怪である。
イメージ通りなんだろう。


≪Aクラス・市原両次郎 保健体育 303点 

& 

Aクラス 名波健一 保健体育 301点



Aクラス 香取健吾 保健体育 323点≫


そして、点数は300を超えている。
保健体育は受験の科目にないんだからもう少し手を抜いても良さそうなのに。 
やっぱりAクラスに入るだけあって真面目なんだろう

「それはそうと、こっちもそうだけど、向こうも向こうで分かり易いお化けだね」

「そうだな。 おかげで敵の行動も予想しやすそうだ」


一方、三年生の方はミイラ男とフランケンというラインナップ。 
どちらもメジャーなお化けだから一目でそれと分かる。 
あの人達の特徴はけがをしやすいとか根はやさしいとかそういった感じだろうか。


「3人とも相手の点数が高いけど頑張れよ!」

龍星が声をかけると。

「……(う、うん頑張るよ!)」

「大丈夫だよ、ボクらもいるし」

「そうだよ、芹香ちゃん」

怖がっている彼女の手を握る愛子とレイナ。


≪Aクラス・工藤愛子 保健体育 479点 



Aクラス 瀬川芹香 保健体育 432点



Aクラス 夜瀬レイナ 保健体育 453点》


さすがこちらもAクラス点数が高い。
瞬きすら許されないような刹那の後、
ミイラ男とフランケンは敵と一度も組み合うことなく地に臥した。 

「ねぇ、澪次。 今の勝負、何があったのか見えた?」

「レイナが凍らせて、芹香さんの召喚獣はうぐいす色の炎で視界を封鎖してたみたい
工藤さんは一瞬で全裸になってミイラ男をボコボコにしてまた服を着ていた」

明久の問いに澪次は苦笑いしながら答える。

「あと、康太はその一瞬で出血・止血・輸血を終わらせていた」


ぽつりと秀久がつぶやいた。
あんな攻防を繰り広げながらも裸にはきっちり反応すしていたとは、彼の反射能力に脱帽だ。

『じゃあ、Dクラスもクリアってことで。 次はどこに行けば良いんだっけ?』

『・・・・・・・・・・・・Cクラス』

『ムッツリーニ君、どうして鼻にティッシュを詰めているのかな?』

『・・・・・・・・・・・・花粉症』

『へぇ〜。 花粉症ねぇ』


ムッツリーニの鼻血の原因が思い当るのか、愛子はずっとニヤニヤしていた。
ちなみに康太と愛子を除いた龍星達はDクラスの教室から出て教室に戻って来ていた。


あきゅろす。
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