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新・バカ達とちみっこ達と赤姫
第111問 ぷろろーぐ
特別企画 バカと鈍感王と不憫わんこの実際にあった怖い話紹介。

「というわけで、ここでは僕、吉井明久と」
「この俺、宮野万里」
「並びにこの俺、吉沢秀久を含めた3人が、皆から寄せられた“実際にあった怖い話”を紹介させていただく」
「…とんでも企画って感じだな」
「そういう事は思ってても口に出さないのが礼儀だよ万里」
「バカ久、そのセリフで本音がばれてるからな。それじゃ、最初のメールを紹介してくれ」
「了解。最初はHN“オレはシブヤ最強のA−Boy”さんからのメールです」
「色々とツッコミ所と言いたい事があるが、とりあえずB−Boyを名乗るか場所をアキバに変えるか、どっちかにしろ」
「えっと……メールの文章が何だかヒップホップ調なんだけど。やっぱりそれっぽく読んだ方が良いかな?」
「? 良くわからんが、そうした方が良いんじゃないか?」
「わかった。それじゃいくよ……“Yeah! オレはシブヤ最強のA−Boy! 常に進むぜ栄光に! 
あまり行かないぜ予備校に!”」
「栄光に向かって進みたいのなら、予備校をサボるなよ」
「“オレのthisを聞け! そして振り向け!”」
「thisとdisを間違えるな。予備校をサボるからそういう事になるんだ」
「“誰の言う事も聞きゃしねぇ! 泣かせた女は数知れねぇ!”」
「泣いた女は、おそらくてめぇの母親だな」
「“オレのラップ、音高く響かせ! 近所のジャップ、恐怖で叫ばせ!”」
「ん? ラップ……? ああ、そういう事か。明久、そのメールはもう読まなくていいぞ」
「“恐れるヤツぁマジ”……え? 良いの? 怖い話がまだ出てきてないけど?」
「ああ、そういうことな」
「ねえ、わんこ。どういうことなのさ」
「明久、そのメールにラップ音とラップの違いを書いて返信してやれ」
「へ? ……あ、そっか……読まなきゃよかったね、このメール」
「……俺も……なんというか、自分が悪くもないのに妙に申し訳ない気分だ」
「……確かに」





【学園長室】


現在、学園長室には学園長はもちろんのこと
西村教諭を含めた教師数人が今起きている出来事の頭を悩ませていた。

「……学園長。コレはなんですか?」

西村教諭が代表として学園長に問うと、

「そう非難がましい目をするんじゃないよ西村先生。
 ちょっとシステムの調整に失敗しただけじゃないか」

肩をすくませながら呆れる学園長。

「……これのどこがちょっとですか?」

「ちょっと見てくれが悪いだけさね」

じと目で問われてしれっと言う学園長。

「そうですか……」

「これで少しですか……」

そう言いながら召喚獣に視線を向ける西村教諭と高橋教諭。

「ああ、そうさね」

偉そうに頷く学園長は座り直している。

「「「「・・・・・・」」」」

冷たい沈黙が学園長室に満ちてきた。

「…もうすぐ、夏、だねぇ…」

そう言うと窓から外を眺める学園長。

「学園長、遠い目をしても無駄ですよ」

高橋教諭がそう言いながら注意する。

「で、コレどうするですか?」

「さすがにコレはマズイですよね」

篠崎教諭と三原教諭が苦笑いを浮かべて告げる。

「わかってるよ。それじゃ、復旧作業進めるから森川先生手伝っておくれ」

「それは構わないけど。これが生徒に発覚したらどうするつもりよ?」

学園長に言われて森川教諭が呆れた様子で問いかける。

「そうね。コレがばれたら少しマズイ事になりそうね」

「どうもこうもないさね。問題は見てくれだけだからね。
 ガキ共が騒ごうが、特に気にする必要もない」

ヴィヴィ教諭の言葉に学園長は気にすることはないという態度で話す。

「ということは?」

「なるようになる、ってだけさ」

西村教諭の問いに学園長は爽やかに言ってのけた。

「やれやれ・・・これだから、この学校は・・・」

森川教諭は、深い溜息をもらした。


〜〜〜〜〜☆〜〜〜〜





期末試験から数日経ったある日の事。

「そういえばさ召喚獣の装備は一度リセットされたんだろ?
 どう変わったのか見てみたいんだが」

秀久がわくわくした様子で最初に言った。

「そういうやそんな事言ってたな」

雄二は思い出した様子で顎に手を当てている。

「じゃあ。一度、召喚獣を呼び出してみようよ。
 皆がどんな装備になっているのか気になるし。
 僕も自分の装備がどう変わったのかも気になるしね」

明久が笑顔でそう言うと。

「そうだな。戦力の把握は試召戦争に必要不可欠だ。 
 幸いにも廊下にはエリカ先生がいることだし、召喚許可をもらって確認しようぜ」

雄二が廊下にいる教師をみつけるとそう言った。

「じゃあ早速……おーいエリカ先生〜!」

「ん? どうしたのかな? 私になんか用かなん?」

秀久が呼ぶとエリカ教諭はすぐに来てくれた。

「すいません。ちょっと先生にお願いがあるんですが」

つぐみが申し訳なさそうに謝る。

「お願いだって?いいよ!聞いてあげるよ!」

笑顔でにこにこと笑みを見せて頷いた。

「実は、少し召喚許可をもらいたいだけなんです」

「あー……」


ひばりの言葉にエリカ教諭は目を泳がせていた。

(ん? どうしたんだろう・・・)

湊斗はその様子を不思議そうに見つめる。

「まぁ、君達なら問題ないだろうからね……いいよ、承認しちゃう」

いやに歯切れが悪いが許可をされた。

(・・・もしかしてまた問題があったのだろうか?)

龍星はありえそうだな〜と苦笑いを浮かべている。

「それじゃ、サモン!」

明久率先して召喚獣を呼びだす。

そして……

「「「「え?」」」」」

現れた召喚獣に、全員が目を疑った。
いつもなら学ランに木刀と言った装備のデフォルメされた明久。
その筈なのに、白銀の甲冑に身を包んだ、一振りの大剣を携えた騎士が姿を現したのだ。
それもデフォルメではなく、殆ど召喚者と変わらない姿と大きさで。

「おいおい……明久のくせに、妙に贅沢な装備じゃないか?
 それに随分とでかいな。試召戦争が本物の戦争みたいになりそうじゃないか」

「そうじゃな。これならば、本物の人間とさして変わらんからの」

秀久と秀吉が明久の召喚獣を見てそれぞれ感想を呟いた。


「確かに明久は今回の試験で大分成績が上がったがここまでとはな」

「だが所詮は明久だな。こんなブサイクじゃ、甲冑に着られてるもいい所だ」

龍星が感心したように呟いていると雄二が明久の召喚獣の頭を軽く小突いてしまう。

「あ、痛っ!」

その叩かれた頭は首から離れ、ゆっくりと重力に従って地面に落下。
胴体から離れた首が転がり、何度も回転した後に動きを止めた。

『『『『きゃぁぁぁあああーっ!?』』』』

ひばり・つぐみ・瑞希・美波の悲鳴があがる。

「えぇぇっ!?な、何コレ!?
 僕の召喚獣がいきなりお茶の間にお見せ出来ない姿になってるんだけど!?」

「ん? ああ、すまん。そんなに強く叩いたつもりはなかったんだが……
 待ってろ、今ホッチキス持ってくる」

驚いている明久に雄二は冷静沈着で答えて動き出す。


「いやいや、そういう問題じゃないだろ。ん?」

龍星が呆れながらツッコミをいれるが。
ふと、召喚獣を見ると一向に消える様子を見せない。
戦闘不能になったら、すぐに消滅してしまう筈のそれは未だに顕在していた。

「明久、ちょっと召喚獣を動かしてみろ」

秀久がそう明久に言うと

「え? あっ、戦闘不能って訳じゃないみたいだね」

促されてやってみると動くことに明久は驚いていた。

「どうやら首は外れる物の、戦闘不能という訳ではみたいだな」

和明がひばりを抱きしめて背中を撫でながらつぶやいた。

「ふむ、俺のはどんなのかね。 試獣召喚!」


龍星はためしにと言霊をつむぐ。
するとハリセンをもった、ところどころ引き締まっている肉体を持つ鬼が現れた。
ランニングのシャツを着ているようだ。
女性陣の目の為の策だろうか。

「お兄ちゃんのは鬼だね」
「そうみたいだな、ツッコミと筋肉でこうなったのかもな」

つぐみがいつのまにか龍星の隣に来て言うと彼は笑いながら言い、肩の上に乗せた。
ちなみに足を押さえて変態には見せないようにしている。

「………(うにゃ〜♪ りゅうくんのカッコイイ)」
「わきゅ〜! 怖いですの〜っ」
「よしよし、大丈夫ですよ?」

芹香はにこにこ笑顔で言うが、白姫だけは怖がって晃希に抱きついていた。

「ど、どういうことじゃ!?」

「……先生……どういうことだ?」

秀吉は驚き、綾香が首をかしげて尋ねる。

「………まあ見ての通りだね」

と苦笑いしながら彼女は答えた。

「って事は学園長が何かミスしたってことですね」

晃希はやや呆れた様子でつぶやいた。

(なにやってんだあの妖怪長は……しかし……)

淳もやや呆れ気味でいた。

「…これ多分ですけど試験召喚システムって確か、
科学技術とオカルトと偶然で成り立ってますから、
オカルト的な要素が色濃く出てるんじゃないでしょうか」

奏がつぐみをなでなでしながらつぶやいた。

「……そうだろうな……」

龍星は、溜息をもらして頷いた。

「何やってるんだ…あの人は…」

和明は頭をかかえながらつぶやく。

「でもどういう基準でこうなったんのかなん?」

クリスは首をかしげて質問する。

「学園長の話を聞く限りでは、どうも召喚者の特徴や本質から
 喚び出される妖怪が決定されるらしいよ」

エリカ教諭は苦笑いを浮かべて話す。

「じゃあ僕の場合、騎士道精神が……」

「そんな訳がないな。首なし騎士(デュラハン)てことは、頭がない。
 つまりバカという方が妥当だな。
 いくら成績が上がってもお前の本質はそういうことって事だ」

試験召喚システムにまで“バカ”認定された明久は、どこか遠い目をしていた。

「では次はワシが召喚してみるのじゃ。サモン!!」

そう言って現れたのは・・・

『ポンッ!!』

秀吉の召喚獣は猫又のようだ。

「どうやら秀吉の特徴は『可愛い』ということらしいな」

綾香がけらけらと笑いながら言う。

「つ、ついにわしは召喚システムにまでそんな扱いを・・・」
「秀吉、どんまいだよ」

落ち込む秀吉に湊斗が声をかけていた。

「ドンマイ」

「あまり落ち込まないでください木下君」

秀久とつぐみも励ますように声をかける。

「二人共…ありがとうなのじゃ」

感動の涙を流す秀吉。

「ところで、シュウのはどんな奴か気になるな」
「……?(きっと、カッコイイ奴かもしれないよ?)」

彼女達の話をスルーして龍星が提案すると芹香はにこにこと笑いながらつぐぴょん達を愛でていた。

「だ、そうだ。呼んでみろよ」
「なんで、俺が…」
「ヒデくん、あたしは見てみたいかな…」

ニヤリと笑う万里を睨む秀久だが、つぐみの制服の袖をひかれて上目づかいに見られると。

「し、仕方ないな。ちょっとだけだからな」
「ありがとう、ヒデくん♪」

頬をかく秀久にお礼を言うつぐみ。
やはり、つぐみには弱いのは変わらないようだ。

「サモン!」

秀久の言霊に導かれて呼ばれたのは人間大サイズの銀の毛むくじゃらのフェンリルだった。
もこもこのふわふあである。

「へ〜……わんこにしてはまと」
「うんうん、こんなカッコイイのなんてうらや」

そう言って感心しながら手を伸ばそうとする二人。
その瞬間だった。

「「ぎゃああああああああ!?」」

雄二と明久の手に銀の魔物のフェンリルが噛みついていたのだ。
なんで噛みつけるのだろうか、やはりこれも特製ゆえか?

「見事に噛みついたな…」
「神を食らう生き物か……秀久はよく暴走するからあってはいるな」

和明と龍星はその光景を見て得心いっているようだ。

「こら! そんなことしたらダメでしょ!」
『……くうぅん』

つぐみが腰に手を当ててしかると狼の耳と尾を垂らして伏せをする秀久のオカルト召喚獣のフェンリル。

「大丈夫か!? 坂本、アキ!」
「そんなに深くまで噛まれてなくてよかったね」

慌てて結華が近寄り、救急箱を取り出す。
澪次も来て手の怪我の程度を見て安心したように呟いた。

「うぅ、どうして噛まれたのかな? 雄二はどうでもいいけど」
「おいい!?」

涙目の明久にくってかかる雄二。

「わきゅ〜…」
「よしよし、獣系もダメなんですね(汗」

怯える白姫を抱きしめてなだめる晃希。

「どうやら、つぐみには忠実みたいだな♪」
「……(つぐちゃんの忠犬みたいだね♪)」

龍星と芹香はくすくすと笑っていた。

「わたしのも可愛いのでしょうか?」
「う〜ん……やってみたらどうかしら?」

瑞希の呟きに美波が反応して声をかけた。

「じゃ、じゃあ……サモンです!」

言霊に導かれて現れた瑞希の召喚獣はサキュバスだった。
胸元がエロく強調されているのがわかる。

「きゃぁああああーっ!?」

慌てて手で隠そうとする瑞希。
だが、かすれて隠せないでいる。

「瑞希、フィールドから離れたらどうだ?」
「あ、そ、そうでした!」

それを見て苦笑しながらアドバイスをする龍星。
慌ててフィールドから出ると瑞希の召喚獣は粒子となって消えた。


「災難じゃったな、姫路」

「うぅ………酷いです……あんな格好だなんて、恥ずかし過ぎです……」

落ち込む瑞希に近寄り、声をかける秀吉。

「なぜ恥ずかしがるんだ? 強そうなくらいとしか思わないが」
「綾香ちゃんは恥ずかしくないんですか!?」

不思議そうな綾香を見て驚く瑞希。


「だが、そうは言ってもアレが姫路の本質のようだからな。 仕方がないだろ」

「わ、私の本質って……?」


雄二が話に割り込んで言うと瑞希が不安そうな瞳でつぐみ達を見る。


「え、えっとね……その、何というか……」
「そ、そうじゃな……言い難いことじゃが…」
「すまん、なにもいえん」

明久・秀吉・龍星は申し訳なさそうな様子で言いにくそうな表情を浮かべる。

「胸がデカいってことだろ」
「それが本質だな」
「あと、大胆なところもじゃないか?」
「うわぁああんっ!」

和明・雄二・秀久がオブラートにつつまずにいってのける。
それを聞いて泣きだす瑞希。


「オマエラ…」
「わ、ちょ!たんま!龍星さん!」
「やべ、つい本音が」
「あでで!?いてーって!」

まあ、これを見て龍星に怒りが浮かんで仲良くアイアンクローとせりかさんのネギが穿たれたのはいうまでもない。


あきゅろす。
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