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新・バカ達とちみっこ達と赤姫
第104問
――そんなこんなで時間がすぎて――


「皆、待たせたな。 夕飯ができたぞ」
「ありがとうございます。 お客さまなのにアキくんのお手伝いまでしていただいて」
「いや、気にしないでくれ。 料理は嫌いじゃないからな」


やっと完成した夕食が、テーブルに並ぶ。 テーブルは父親が拡張式にしているため、何なく並べられた。
見ているだけでとても美味しそうだ。

「ありがとうございます……」
「美味しそうね……」

少々落ち込んだ様子の二人を見て明久は首をかしげていた。


「では、冷めないうちに頂きましょう」


目の前の湯気が出ている料理に視線が移る。
折角作った料理が覚めてしまうのも勿体ない。

「「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」


手を合わせて目の前の料理に取りかかるつぐみ達。


「む。 これはまた、美味いもんじゃな」
「そうか。 口に合ったようで何よりだ」
「そう言ってもらえると作った甲斐があるよ」
「……(こくり)」
「まあ、じゃんじゃん食えよ」

秀吉がニコニコとパエリアを頬張っている。
そして、それとは対照的に砂を噛んだような表情をしている瑞希と美波。

「あれ? 二人ともパエリアは苦手だったか?」
「う……いや、嫌いじゃないし、すごく美味しいんだけど……」
「だからこそ、落ち込むと言いますか……」

秀久が問いかけると苦笑を浮かべる瑞希と美波。
乙女心は複雑なのだ。


「どうして、ヒデくんはあたしを膝の上に乗せるの!?」
「細かいことは気にしないでいいんだよ」

ちなみに、つぐみは秀久の膝の上に乗せられていた。
また、席につこうとした彼女を引きよせたのだろうと明久達は予想していた。


「ところで、皆さん」

これは好機とばかりに玲が話を切り出す。

「うちの弟と未来の義妹の学校生活はどんな感じでしょうか? 例えば、成績や『異性関係』など」


やけに後者が強調されている。
彼女がみんなを夕食に誘ったのはこのためだったのかと明久が考えていると結華は首をかしげている。
なんか違和感があるのだろうか。
だが、秀久と雄二とムッツリーニの口止めは済んでいるが、問題は秀吉である。
もちろん、秀久の発言にも注意しなくてはいけないかもしれない。


「えっと、明久君は結ちゃんと一緒に勉強をして凄く頑張っていると思います。 最近は成績も伸びてきたみたいですし」
「そうね、もう阿吽の呼吸のようにおたがいの考えていることわかってるしね」

瑞希と美波が笑顔で答える。
さすが、良識人だと定評のある二人だ。

「そうですか。 それで、異性関係は?」
「それは、知りませんね…」
「ウチも知らないわ」

玲を見て申し訳なさそうにしながら告げる。
優しい彼女達なりの気遣いなのだろう。


「異性関係かの?……それはないじゃろうて」
「異性関係?ないんじゃね?

秀吉がぽつりと呟いて綾香はけろっとした様子で言う。
まあ、結華一筋なのは見ていてわかるからだろう。

「そうですか、他のみなさんは?」

玲の問に全員が首を振る。

「湊斗、あーん♪」
「ん? あ―ん」

綾香に言われて口を開く湊斗。
リア充のような仲の良さだ。
そのままもぎゅもぎゅとキノコを租借する湊斗。


「これも、うまいぞ? あーん♪」
「あーん(もぎゅもぎゅ)」

次々と口に運んでいく綾香につられて食べていく湊斗。

「もっと、食べていいぞ〜? あーん♪」
「あーん(もぎゅもぎゅ)」

またまた口に運んでいく綾香はなぜか楽しそうに見える。

「ほい、湊斗。あーん♪」
「あーん」

綾香と湊斗のイチャツキぷりにムッツリーニの背後に嫉妬の闘志が。

「秀久くんはなにか」
「はい、ヒデくん。あーん」
「んな!? つ、つぐみ?」

ため息をついてから秀久へと矛先をむけたが、こちらはつぐみにより阻止された。

「あーん♪」
「あ、あむ///」

笑顔でキノコをむけられてしまい、顔を赤らめながら口を開いて口の中へに招き入れて租借する。

「つぐみちゃん、なんで邪魔するんですか」
「じゃ、邪魔じゃないよ!? これは、綾香ちゃん達がうらやましくてつい!」

玲の拗ねた顔を見てつぐみは慌てながら告げる。
その間に顔の熱を冷まそうとする秀久だが、つぐみをひょいっと抱き上げて髪を撫でていた。
まあ、これにつぐみは慌ててショートしたのはいうまでもない。

『もきゅもきゅ♪』
「可愛いですね…」

痴話げんかに発展しそうだったのでこの話をあきらめた玲。
ふと、思い出して美味しそうに食べてるぷち達へと視線を向けて笑顔で見ていた。

しばらく他愛もない話をしながら料理を食べていると、玲が何かを思い出したらしく


「そう言えば、言い忘れていました。 明日から姉さんの食事は用意しなくても結構ですよ」


と言ってきたのだ。


「え? そうなの?」

「はい。 こちらですませておかないといけない仕事があって、明日から土曜日か日曜日くらいまでは帰りが遅くなりそうなのです」


仕事と言いうと、玲が手伝っている父の会社のことである。 本籍地は日本になっており、手続きか取引でもあるのだろう。
だが、基本的にどんな仕事をしてるのか、明久達にはわからないでいた。

「アキくんにつぐみちゃん、なにやら嬉しそうですね?」
「ぅえ!? い、いや、そんな事はないよっ。 折角帰ってきた姉さんがいないのは凄く残念だよ!
ね、ゆい!」
「そ、そうそう!これぽっちも嬉しいなんて思ってないから!」

じと目の彼女を見て慌てて言い繕う二人。

「英語で言ってみてください」
『Regret』

と言うと二人はあっさりと答えた。


「姉さんは今、凄く驚いています」
『『それどう意味!?』』

目を丸くする玲に二人のWツッコミがきまった。
その後、テキパキと後片付けを終えて全員がリビングに集まると、瑞希がいよいよ今日の集まりの本題を切り出したのだ。
これも結華達のことを考えてのことだろう。

「そろそろお勉強を始めましょうか?」
「そうね。 あまり帰りが遅くなっても困るし」

夕飯の支度が早かったせいか、現在時刻はまだ七時。 今からでもたっぷりと勉強はできそうだ。

「ならば、わしも一緒に教えてもらうとするかの」
「…………同じく」
「そうだね。 テスト前だからってワケじゃなくて、いつものように『勉強』を始めようか!」


秀吉とムッツリーニが賛同し、明久は笑顔で周りをみながら勉強道具を取り出す。


「皆さんでお勉強ですか。 それなら良い物がありますよ?」
「え、良い物?」
「はい。 今日部屋を片付けていて見つけました。 今持ってきますね」


トタトタとリビングを出て行く玲。 

「せりかっか!」

そこへせりかさんが現れてそう言うと玲が入っていった扉を締めていく。

「ところでムッツリーニはどうしたのじゃ? 随分とおとなしいようじゃが」
「あ、そういえば」


あんな本が出てきたのに何の興味を示さないなんてムッツリーニらしくなかった。



「…………………(キョロキョロ」
「? どうしたのムッツリーニ?」


ムッツリーニは何かを捜すように辺りを見回していた。
いったい何をしているのだろうか。


「……………明久」
「ん?」

振り向いて明久に声をかけると、聞き返す明久。


「………他にエロ本は?」
「あるわけないでしょ?結華のエロエロ本ならあるけど」
「おいこら、今なんて言ったよ」

康太の問いに否定する明久。
途中の言葉に結華の目がすわっていた。

「明久のエロ本は置いといて、勉強するならさっさと始めようぜ」

呆れたように雄二が告げた。
不思議である、こういう時の彼は常識人に見えてしまうのだから。

「やっぱり、槍がふるんじゃねーか」
「綾香ちゃん、あんまりいじってあげたらダメだよ」

綾香の呟きにひばりが苦笑しながら注意するのだった。
 
「そういえばあの姉貴は、どこの大学に行ってたんだ?」
「いきなり何? 藪から棒に……」

雄二の疑問に結華がいぶかしげな様子で振り向いて聞いた。


「いや、疑問に思ってな」
「それは、わしもじゃな」
「……………興味ある」
「ウチもかな…」
「私も聞かせてもらいたいな」
「俺もだな」

雄二・秀吉・康太・奏・美波・綾香・ひばり・湊斗・和明・秀久は聞きたそうだった。
そして、希へと視線をむけられた。

「玲さんは日本ではなくアメリカのボストンにある大学の教育課程を昨年修了したんだよ」
「ぼ、ボストンの大学だと………!? それってまさか、世界に名高いハーバード――」


結華の返答に雄二は目を見開いて驚いた様子を見せる。


「うん、そうだけど…」
「「「「えぇぇっ!?」」」」

視線は明久へと向けられて、彼は苦笑しながら頷いた。
これを聞いて驚く雄二・秀吉・ムッツリーニ・美波・秀久。
勉強だけはできるが、常識だけは知識不足なのが彼女のマイナスポイントだろう。


「なるほど、出涸らしか……」
「雄二。 その言葉を言う覚悟はあるんだな」

呟いた雄二に龍星がハリセンをちらつかせながら綺麗な笑顔で言った。

「よし、勉強するかな」
「あ、こら逃げるな!」

そそくさと逃げる雄二に声をあげる明久だった。


あきゅろす。
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