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新・バカ達とちみっこ達と赤姫
第97問
「……雄二」

「なんだ翔子?」

翔子に声をかけられて振り向く雄二。

「……携帯電話を見せて欲しい」

「どうした?なんでいきなりそんなことを言い出すんだ?」

翔子の言葉に不思議そうに尋ねる雄二。

「……昨日、TVで言ってたから」

「TVで?何を?」

翔子の答えに不思議そうに見つめる雄二。

「……浮気の痕跡は携帯電話に残っていることが多いって」

「ほほぅ」

自信満々の翔子を見て納得する雄二。

「……だから、見せて」

「断る」

翔子の言葉に即答で拒否する雄二。

「……歯を食い縛って欲しい」

「待て待て! 今途中経過が色々飛んだぞ!? 
いきなりグーか!? グーで来る気か!?」

翔子の言葉にツッコミをいれる雄二。

「……見せてくれる?」

「あー……いや、それがだな。
今日はたまたま家に忘れてぎゃぁああっ!目が、目がぁぁっ!」

問われるが雄二はしらをきろうとする。

「……最初からこうするべきだった」

「…結局…目突きじゃねぇか! 歯を食い縛れってのは何だったんだ!
フェイクだったのか畜生!」

満足げに言う翔子に叫ぶ雄二。

「……雄二。手をどけて。携帯電話が取れない」

「わ、渡さねぇぞ!お前なんかに奪われてたまるか!」

翔子から携帯を取られないように必死になる雄二。

「……抵抗するなら、ズボンとトランクスごと持っていく」

「トラ……っ!? 百歩譲ってズボンはまだしも、トランクスは関係ないだろ!?
 お前は下半身裸の状態で登校しろと言うのか!?」

翔子の言葉に驚く雄二。

「……男の子は裸にYシャツ一枚だけの格好が大好きってお義母さんから聞いた」

「違う! 好きだからって自分がなりたいワケじゃねぇ!
そこはかなり大事なところだから間違えんな!」

翔子の突拍子もない答えに叫ぶ雄二。

「……それに、私も雄二のその姿を見てみたい」

「お前は変態か!?」

翔子が頬をそめて言うとツッコミをいれる雄二。

「……変態じゃない。私には、雄二の成長を確認する義務があるというだけ」

「ええい、ベルトに手を伸ばすな! ズボンのホックを外そうとするな!
 わかった! 渡す! 携帯電話を渡すから!」

雄二のベルトとズボンを取ろうとしていた。

「……………そう」

「翔子。なぜそこで露骨にがっかりした顔をするんだ」

残念そうな翔子に呆れる雄二。

「……それじゃあ、携帯電話を見せて」

「やれやれ……。頼むから壊してくれるなよ、機械音痴」

翔子に言われて携帯を渡す雄二。

「……努力する」

「そうしてくれ」

翔子の即答に祈るような気持ちで言う。

「………………」

「どうだ? 何も面白いものはないだろ?
 わかったらおとなしく携帯を返し……だから待て!
 なぜ俺のズボンに手をかける!?携帯はもう渡してあるだろ!?」

黙り込んでズボンにてをかけられて驚く雄二。

「……私より、吉井と上狼達の方がメールも着信も多い」

「あん?それがどうかしたのか?」

翔子の言葉に訝しげな表情を見せる。

「……つまり、雄二の浮気相手は吉井と上狼ということになる」

「いや、ならないだろ」

雄二が翔子の解答にツッコミをいれた。

「……だから、お仕置き」

「どうして俺の周りには性別の違いを些細なことと考える連中が多いんだ……?
 いいか翔子、メールの内容をよく見てみろ、ただの遊びの連絡だろ?」

翔子の言葉に雄二は呆れていた。

「……でも」

Pipipipi

「っと、メールか。今のは俺の携帯だよな?
 確認するから携帯を……いや、違うな。
 携帯よりも先に、ルパンもビックリの手際で抜き取った俺のベルトを返すんだ」

「……ダメ。返さない」

「は? 何で……ってうぉぃっ!? 今度は更にズボンを取る気なのか!?
 ここは天下の往来だと……いやいやわかった! 俺も大人だ。
 千歩譲ってズボンは渡してやってもいい。
だからせめて、せめてトランクスだけは…!」

「……ダメ」

「お前は正気か!?自分が何をしているのかわかっているのか!?」

「……浮気は、絶対に、許さない……!」

「畜生!さっきのメールには何が書いてあったんだ!?」


【Message From 吉井明久】

雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ。




〜〜〜☆〜〜〜〜



秀久はつぐみと一緒に登校していた。

「よう雄二」
「おはよう、坂本くん」

とりあえず声をかけてみる二人。

「秀久か? 奇遇だな。仲の良いこってだな」

「うっせェよ。そっちこそ、下半身トランクス姿で登校なんて……」

そう、何故か雄二は往来で下半身がトランクス姿だった。

「これを見ろ」

雄二が二人に見せたのは携帯のメール。明久からのようだった。


【Message From 吉井明久】

雄二の家に泊めてもらえないかな。今夜はちょっと……帰りたくないんだ。


「……明久に何があったんだ?」

「さあ?」

秀久とつぐみは不思議そうに首をかしげる。

「んなの俺が知るか! これを翔子に見られたせいで浮気の証拠だとか
 罰だとかで俺はズボンも持っていかれちまったんだ!」

「……全く意味不明な経緯だが……お前と霧島ならありうる状況だな。
 まぁ後で俺が霧島のところ行って取り返してくるよ」

「手伝うよ、ヒデくん」

叫ぶ雄二を宥めるつもりで言う秀久につぐみは笑顔で言う。

「……すまない」

その後はお互い無言で学校まで歩き続ける。
当然、周囲からの視線を浴びながら……

「おい見ろよ、坂本のヤツ下半身パンツ一丁だぞ」

「マジかよ……最近女装には見慣れたと思っていたが、あれはさらに引くわな……」

「つーか、そんなやつと隣歩いて登校する上狼達もある意味勇者だよな」

秀久とつぐみはとりあえず雄二から少し距離をとってから再び元のペースで歩き出すが、
それに合わせるように雄二も二人の隣について歩く。

「悪い雄二。大変言い難いことがあるんだが」

「何も言うな」

雄二に秀久が声をかけると突っぱねるように口を開いた。

「俺達に近寄らないでくれ、それも一生」

「「さすがに一生はないだろ(でしょ)!」」

雄二とつぐみの声が揃った。

「冗談だ。とりあえずこの体操着でも着てみたら?」

「持ってるのなら、言えよな!?」

秀久が言うと叫ぶ雄二。

「聞いてこなかったから」

「っ! まぁいい借りるぞ」

しれっと言うと拳をわなわなしながら言う雄二。

「どーぞ」

秀久は袋に入った体操着(短パン)を雄二に渡し、
それを受け取ると物陰に隠れて着替えた。

「じゃあ行こうぜ」

「そうだね♪」

「ああ、ありがとう秀久。本当に助かった。色んな意味で」

秀久に言われて頷くつぐみ。
雄二は感謝するようにお礼をいった。

「貸し1な」

「…わかった」

そして着替えた雄二と共に学校へと向かった。


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