魔法戦記リリカルなのはForce鋼鉄の騎士
第四十一話
「エクリプスの治療方法は特務の医療技術チームが全力で研究中よ」
アイシスにそう言うとリュウセイの方に近寄る。
「トーマ君をエクリプス感染から回復した最初の患者にしてみせる」
そう言って気絶しているトーマの頬を優しく撫でた。
「なんですかそれ? トーマを治療の人体実験にしようって話ですか?」
アイシスがそう言いながら睨みつける。
「まあまあ、落ち着けよ」
「そうだよ、そんなに噛み付かないで」
「管理局も特務六課もそんな残酷な組織じゃないよ」
リュウセイがアイシスを宥め、なのはとフェイトも近寄りながら告げる。
「なによりうちのエースの大事な子を実験素材扱いなんてしないから、黒髪ちゃんにもお話聞かせて欲しいし、任意同行お願いできるかな?」
なのはが笑顔で手を差し伸べる。
「任意って名目の強制ですよね、それ」
「任意は任意だよ。いいこで来てくれたら嬉しいけどね」
アイシスが警戒しながら言うけどなのはにこにこ笑顔を見せるだけだ。
「その前にトーマにはお説教だけどな」
〈お兄ちゃん、どこか楽しそうだね?〉
リュウセイの笑みに気づいてつぐみはにこにこ笑顔を浮かべる。
アイシスはトーマのことを思うと頬をひくつかせていた。
*****
そんなことしている頃。
フッケバインの方では・・・。
「いやー、疲れた疲れた」
「今回はまた長旅でしたね」
ソファーに座っているカレンにフォルティスがにこにこ笑顔で近寄る。
ヴェイロンは缶ビールを手にソファーの隣に立っている。
「でもおかげでいろんなお宝もゲットできたからね。『フッケバイン』の新型航行システムのおかげでステラも大分楽になるだろうし」
フロッピーディスクをひらひら見せつけながら片目つぶって言うカレン。
そのカレンの膝にステラが笑顔で横になっている。
「しかし、姉貴よ。特務の頭は潰しとかなくてよかったのか? 奴らなんて、まだそこまで成長してないだろうに」
「あまあまちゃんね、ヴェイ。 味方に引き込む為にはあんまり手荒になんてしてられないのよ。
それにあの子を殺したら殺したで局を無駄に本気にさせかねないのよ。
あの子は局の有名人だしね。関係者に、仇討ちだの逆恨みだので大挙して来られても面倒くさいし、だからあの子には墓場で隠居されるよりこのまま立ち回ってもらうことにしたの。
この調子であの子達は頑張って追ってきてくれればいい。
あたしたちはあの子達からだけ逃げればいい。
凶鳥《フッケバイン》と特務で、しばらくうまくやっていけるんじゃないかな」
口元に笑みを浮かべて話すカレン。
「姉貴のやり方は面倒でいけねぇな」
涼介が面倒くさそうに鼻を鳴らす。
「そう言わない。 ”そうそう殺される事はない”とはいえまだまだうちら小さな一家だからね。
でっかいことやるにはそれなり立ち回りが必要なのよ。
ま、頭使うのはあたしとフォルティスがやるからさ」
「はい」
ステラを撫でながらフォルティスに視線を向ける。
フォルティスは笑みを見せて返事をする。
「まあ、何するかは任せらぁ」
「俺らは姉貴の命令に従うからよ」
「うん、そうして」
そう言いながら出ていこうとするヴェイロンと涼介に頷くカレン。
「あ、そうだ。もういっこ思い出した」
カレンがふと思い出すとつぶやいた。
「例のうちらのまがい物ね。やっと正体を掴んだんだ」
カレンの言葉にざわつくメンバー達。
「『本と銃剣の二人組』ーーーですか?」
「レプリカディバイダーを持った」
「そー、次の仕事ついでもあるしまずはそっちから取り掛かろうかなって、あたしらを騙ってハンパな仕事してる連中にちょいとお灸を据えないとね」
フォルティスと涼介の言葉に頷いてからステラの頭を撫でつつ不敵に笑う。
握りこぶしをして怒るステラは愛らしかった。
****
第3管理世界ヴァイゼン
カレドヴルフ・テクニス本社開発センター
その中にはギンガ達がいた。
「これが・・・?」
「はい、当社の最新鋭端末ーーー我がカレドヴルフ・テクニスの次世代自立汎用端末(デバイス)CW-ADX『ラプター』です」
ギンガの問いに白衣を着たヘアバンドに茶髪色のロングヘアーの女性が資料を手にしたまま、空いた方の手でラプターへと向ける。
「『ラプター』は外部からの命令と指示を受けて動く自立行動型です。
アイカメラのモニタリングにより当該機体の視界はつねに司令部に送信、リアルタイムで指示を下すことができます。
もちろん、複数機体の同時操作や人数ごとの部隊運動のセッティングもできます」
そう女性が話をしていると、遠くの方から同じ白衣を着た女性とラプターが歩いてきた。
そのラプターが白衣を着た女性の前で止まると。
「内燃バッテリーによって通常稼働なら約40時間、全機能開放状態の限界稼働も現時点最大25分まで継続可能、各種の追加装備によって稼働時間の増加や拡張外部兵装へも対応可能です」
にこにこ笑顔でそう話すとラプターがぴしっと敬礼する。
それに驚きながらも片目に眼帯をした小さな少女ーーチンクともうひとりの女性も敬礼する。
「まさに至れりつくせりの万能兵器といったところですか」
「操作系統の調整、メンテナンスや機体・パーツの単価などまだ詰めなければならない点は多いんですが・・・・。
管理局への正式採用に向けて弊社一同、懸命に頑張っております」
カレドヴルフ・テクニス本社開発センターで話をギンガ達が聞いている頃。
車の中でウェンディがスバルと連絡を取っていた。
『フッケバインの拿捕と構成員の捕獲は失敗ーー部隊長を含む六課メンバー数名は比較的軽傷。
被害を受けた少年少女の救出は成功』
「そうッスか・・・・」
髪を頭に後ろにひとまとめにした少女ーーーウェンディが顎に手を当てて神妙な顔付きでつぶやいた。
彼女は特務六課捜査部の執務官補である。
『ウェンディとユウ達の方はどう?』
「CWの本社でギンガさんとチンクが現場視察と手がかりをお伺いをしているよ」
スバルの問いにウェンディの後ろの座席にいた少年が答える。
彼の名はユウヤ・サキモリ。
昔に色々あり、彼はナカジマ家に引き取られている。
「例の『本と銃剣の二人組』の手がかりが出てくるといいんスけどね」
『そうだね』
ウェンディが腕組しながらスバルに話すとスバルが同意する。
「トーマが無事なのは幸いだったな」
「そうスね、けど・・・・大丈夫そうなんスか?」
『今、フェイトさんとリュウセイが話を聞いてるよ』
ユウヤとウェンディは安堵しながらも尋ねるとスバルは答えた。
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