小説 初仕事!2 悠貴はマネージャーの二人に違和感を感じたが、すぐに切り替えてウォーミングアップ中の選手たちを観察しはじめた。 「うーん…」 視線の先には、スタメンの五人がスリーメンをしている。 宮「終了!次、シュートいくぞ!」 キャプテンの宮地(弟)が声をかけ、選手たちがボールを取って次々とレイアップをしていく。 (…よし、大体わかった) 悠貴は一つ頷くと、手に持っていたバインダーにすごい速さでスタメンのデータを書き込みはじめた。 中「どうかな、神崎くん。うちの練習は?」 「流石、の一言に尽きますね。選手たち一人一人の質も高い。 練習内容自体に大きな変更は無いです。 …あとは、一人一人に合ったメニューが必要ですかね」 悠貴がそう言うと、中谷監督は驚いたように目を見開いた。 中「選手一人一人にメニューを組んでくれるのかい?」 「あ、はい。 宮地くんには、ゴール下の技術を磨いてもらう必要があります。 緑間くんには、3P以外のシュートも身につけてもらいたい所ですね。 高尾くんは、スピードやドリブルスキルに不得手は無いようですが、PGならば、アウトサイドシュートも身につけたほうが有利だと思います」 中「なるほど。確かに、今はまだ選手一人一人のバリエーションが少ないかも知れんな。 …うん、今日の練習後、自習練習の時間を利用してもらったほうがよさそうだ。 その辺りは、君に一任するよ」 「ありがとうございます!」 中谷監督は、さらに付け加えた。 中「ああ、今日は練習の最後にミニゲームをやるんだった。 実は、そこで新しいスタメンを選ぼうと思っていてね。 神崎くん、君にも手伝ってもらいたいんだが…いいかな?」 「もちろんです。俺なんかの意見で良ければ」 「いやいや、第三者の冷静な意見も聞いてみたいからね。よろしく頼むよ」 「はい!」 悠貴は、データ収集を続けた。 *緑間Side* 今日、秀徳にコーチとしてやってきた神崎 悠貴。 白い髪や琥珀色の瞳、色素の薄い肌など、恐らく彼はアルビノといわれる種の人だろうと予想できた。 先ほどから見ていると、優男のような外見にしては、かなりのスポーツマンのようだ。 …そして、高尾の怪我に気づいた。 あれに気づかれるとは思っていなかった。 先輩たちでさえ、気付くのに遅れたのに。 高「…なあ、真ちゃん。あの人、どう思うよ?」 「…………さあな」 いまだに謎が多い。実力を見せてもらうとするか。 *緑間Side終了* * 「…こんなものかな」 悠貴がデータ収集のまとめを終えると、丁度午前中の練習が終わった。 「「「「ありがとうございました!!!!」」」」」 中「うん、じゃあ昼休憩にしようか。一時半から午後練習を再開しよう」 「「「「うっす!!!!!」」」」 選手たちが昼御飯を食べるために、各々散っていく。 そんな中、悠貴に近づく二つの影があった。 緑「…神崎コーチ」 「…緑間くん?どうかした?」 緑間は、眼鏡を押し上げた。 緑「神崎さん。…俺と、勝負して貰えませんか」 緑間の言葉に、悠貴の目が鋭くなった。 「…何故?」 緑「あなたが強いことはわかります。 しかし、俺より強いかは分からない。だからです。 単純に、あなたの実力を知りたいんです」 悠貴は目元をやわらげた。 高「別に、負けたら出ていけー!とかじゃないっすよ? 俺も悠貴サンの実力を見てみたいってだけですし!」 「…うん、わかった。いいよ」 悠貴が了承すると、二人は嬉しそうに笑った(緑間は眼鏡を押し上げた手で口元を隠していたが)。 「じゃあ、三本先取制にしようか。お昼が食べられなくなるのも嫌だからね」 悠貴はそう言うと、ジャケットを脱ぎ、シャツも脱いでタンクトップ一枚とジーンズになった。 悠貴の白い肌が目を引く。が、それ以上に、バランスよく鍛えられた肉体が目立った。 「先攻は緑間くんでいいよ。高尾くん、審判お願いできる?」 高「いいっすよ! はい、真ちゃん!ボールっ!」 高尾が緑間にボールを渡し、二人はセンターラインに向かい合って立つ。 緑「やるからには、負けないのだよ」 「こっちのセリフだよ。大人気ないかもだけど、負ける気は毛頭ないよ」 悠貴の目が鋭くなる。 高「……始め!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |