帽子屋の狂い言 三人いれば姦しい※ 「もう10月よ、パンプキン!」 家にやってきた三月ウサギを見るなり、アリスは仁王立ちになって言った。 「なに? 南瓜って、あだ名? 所詮わたしなんてカボチャ顔だって?」 アリスの言動に、三月ウサギはとりあえずツッコミをいれてみる。 「違うわよ、ハロウィンよ。知らないの? 仮装をして、『お菓子をくれないと悪戯するぞぉ〜』って言い合うの」 「そんなに魅惑的な菓子があるんだね」 「お菓子がメインじゃないわ。仮装をする楽しさを満喫するの!」 「ふーん。で? 南瓜は何かに使うの? 海辺で目隠ししながら割り合うとか?」 「西瓜じゃないんだから・・・・・・中をくり抜いてランタンにするのよ。ジャック・オ・ランタンって言って」 「アリスの国はいろいろあるんだなぁ」 三月ウサギは目をしばたたかせた。せっかくだしね、とアリスはにこりと笑う。 「日ごろお世話になってる『彼ら』に、何かプレゼントしましょ!」 ************ 「さーて、本日は忙しい中お集まりいただきありがとう!」 「・・・・・・呼んでくれて・・・・・・ありがとう」 「まぁ、ようは雑用係だよね」 「今日は私たち3人で、帽子屋邸の2人に何かプレゼントをしたいと思います」 「・・・・・・アリスちゃん・・・・・・張り切ってる・・・・・・」 「アレだよね、マイク持たせたらキャラ変わるタイプだよね」 「じゃあ、まずは何を送るか。南瓜を贈っても、いらないわよね」 「花のかんむり・・・・・・いらないかな」 「せっかくだし、何か残るものが良いんじゃない? そういえば、前に眠りネズミがズボン欲しいって言ってた」 「それ・・・・・・いい」 「冴えてるわね三月。服ならいつまででも着られるし、思い出になるわ!」 「おぉ」 「そうと決まったらデザインね。何から始めれば良いかしら」 「・・・・・・型紙作り・・・・・・?」 「そっか、まずは紙を切って・・・・・・面倒だから布を直接切っちゃおうか」 「ダメだこりゃ」 「なによー三月」 「いい? 服は平面じゃない、立体なんだよ。まずは相手にどんな服を着せたいか、どんな服が似合うか、すべてはそこにかかってる!」 「おお」 「って、帽子を作るとき帽子屋が言ってた」 「なるほど。じゃあ、まずは帽子屋さんの服から・・・・・・」 女子3人の声は、深夜になってもとどまることはなかった。 「痛っ」 「大丈夫・・・・・・? アリスちゃん」 「うん、大丈夫。ありがとう。・・・・・・まあ、芋虫って器用ね。あっという間に縫い上げてる」 「ふぁー、針はあまり慣れてないから、ちまちまして疲れるなぁ」 「う、三月はゆっくりだけど確実に綺麗に縫えてる」 「アリスはどんな感じ?」 「お腹空いたね、何か持ってくるわ」 「逃げるなこらー」 「ワタシ・・・・・・紅茶・・・・・・飲みたい」 「すぐに持ってくるわ!」 彼女たちの声は、鳥たちが目覚め出す時間になっても、とどまることはなかった。 「もう少しよ、三月! 頑張って、芋虫」 「芋虫ー、はい。裁断終了っ」 「あとは・・・・・・これをくっつけて・・・・・・」 「ファイトよ2人とも! あ、包装紙を用意しなきゃね」 「いやー、言い出しっぺのアリスが1番裁縫できないとはねー」 「誰だって得手不得手はあるわ。袋の飾り付けは任せて!」 「できた・・・・・・カボチャパンツ」 「やったわ芋虫! 完成よ!」 「急いでアリス。もうお茶会の時間になるよっ」 「袋に入れるから待って! あたしの特技を披露させてっ」 アリスは急いでリボンをかける。左右均等になったリボンは、故郷で培った練習の賜物だった。 「上手・・・・・・アリスちゃん」 「そんなリボンすぐにほどいちゃうのにさ」 言いながら、三月ウサギは玄関の扉を開けた。 3人が用意したこのプレゼント。・・・・・・どんな内容かは受け取った『彼等』が知っている。 End [←][→] |