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帽子屋の狂い言
あるアリスの日常※
〇月〇日

 この世界に来て、数日がたちました。三月ウサギの家を借りることになって、一人暮らしにも慣れてきたわ。といっても、日中は外にいてばかりだから、ほとんど家で暮らしていないのだけれど。
 とりあえず、1人でいられる場所があるのはありがたいです。こうして日記を書けるのだから。


〇月×日

 今日は、双子たちがあたしの家(いいえ、正確には『あたしが借りている三月ウサギの家』だわ)の前で遊んでいました。
 たまたま帽子屋さんの家に向かおうとして外に出たら、庭のところで双りしてしゃがんていたので、何かしら、と声をかけたら地面にお絵かきをしてました。
 かわいくって、一緒に遊びたかったんだけど、帽子屋さんの家に用事があったのでまた今度って言って別れました。いつか遊びたいです。


〇月△日

 今日はみんなで茶会を開きました。白兎に会って、もとの世界に帰らせてって言ったのは良いけれど、彼はあろうことかあたしのことすら忘れていました。なんてこと! 本当に三月ウサギのことしか考えていないみたい。今度とっちめてやりたいです。
 ただ、いろんなヒトに会いました。髪がみどりの女のヒトと、紫の綺麗なヒト。赤髪のフードを被ったヒトも見ましたが、てんやわんやで全然話し掛けられませんでした。今度話をしてみたいです。


〇月□日

 今日は天気がよかったです。最近になってようやく、双子があたしを待っていてくれていたことに気付きました。今日も帽子屋邸に行くつもりだったけれど、いつもより早起きして双子と遊びました。
 途中で昼寝しちゃったんだけど・・・・・・まあ、良いわね。あたしが目を覚ましたとき、眠りネズミったらおへそを出して大の字で寝てたのが、面白かったです。
 その日はもう一つ、三月がいなくなる事件が起きたのだけれど、彼女が無事に帰ってくれてよかったわ。その日から、白兎が事あるごとに『三月の歌声は世界一!!!』って叫んでるんだけど、なんなのかしら?


△月×日

 森で、みどりの髪の女の子と会いました。小さな声でしゃべるものだから、はじめは話しづらかったけれど、慣れるととってもいい子だってわかりました。
 今回はすぐに別れちゃったけど、今度はゆっくりお話したいです。


□月〇日

 森で、フードを被った少年に会いました。彼は私が彼を見つけたことに、ひどく驚いた様子でした。名前を尋ねると、彼は嫌々そうに『シャチ猫』と答えました。不思議な名前ね。彼の秘密を知ってしまったりもしましたが、胸の中だけにしまっておきます。
 ※追記/三月に『シャチ猫ってどんなヒト?』って聞いたら、笑われました。『チェシャ猫』が正解らしいです。自分の名前も言えないなんて、なんてヒトなの!


みらい月あした日

 思いもよらないことの起こる毎日に、ドキドキしながら笑っているあたし。

 明日のあたしも笑ってる?

 元の世界に戻りたいけど、この世界にいる間は、ずっと笑顔でいられますように。




End

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あきゅろす。
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