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EVA
君と見る風景*庵53

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「今日、ちょっと寄り道しないかい?」

そう、カヲルくんから誘いを受けたのはついさっき。夕日が輝く教室でだった。
お互い用事で忙しく、一緒に登下校するくらいしか出来なかったので、僕は快く了承した。すると、カヲルくんはいつものような優しい笑顔を浮かべ僕の手を握った。僕はそれに返すように握り返した。

***

「寄り道って、一体どこに行くの?」

「ふふ。それは行ってからのお楽しみだよ」

いつも乗る電車とは真逆へ向かう電車に乗った僕ら。寄り道、というものに僕は街やらで店巡りをするものとばかり思っていた僕は車窓からのどんどんと田舎へと近くなる風景を眺め、小首を傾げる。
カヲルくんに行く先を聞いてみるが、先程と同じような笑みを浮かべながら、人差し指を自身の唇に当てた。そんな彼の様子を不思議に思いながらも、再び車窓の景色に目をやった。

『次はー終点、終点』

「さぁ。シンジくん、降りようか」

「う、うん」

先に座席から立ったカヲルくんは僕に手を差し出す。僕はその手の上に自分の手を乗っけて、ゆっくりと電車を降りた。
電車から降りると、周りに人は見当たらず、目の前には…---

「う、み?」

「そう。シンジくん、最近来た事ないだろう?」

「う、うん。そうだけど…」

海独特の潮風が僕の頬を擽る。横を見れば、カヲルくんの銀色の髪がさらさらと揺れていた。それがとても綺麗で…

「シンジくん?」

「…!」

いつの間にやら見とれていたらしい。カヲルくんが不思議そうな表情を浮かべ僕を見ていた。はっとした僕は大丈夫だよと微笑んだ。

「ならいいけど。あそこに座ろうか」

そう言ったカヲルくんが指差したのは、この海が一望出来そうな堤防。僕は軽く頷くとカヲルくんに手を引かれ、堤防に向かった。

「…綺麗、だね」

「そうだね」

「でも、なんで海なんて?」

「うーん…。特にこれと言った理由はないけど…強いて言うなら」

君とこの風景が見たかったから、かな?
なんて、僕をしっかりと見据えながら笑うカヲルくんにドキリと胸が音を立てる。
なんだかずるいな、カヲルくんは。いつも彼の言葉、仕草で僕の心臓はいくつあっても足りないぐらいだ。でも、それ以上にカヲルくんは僕に喜びとか、幸せとかをくれて…。

「…ぐすっ」

「シンジくん?」

「うっ、ごめ…なんか、嬉しいっていうか、幸せっていうかで…」

「……」

胸から湧き上がるよく分からない…ふわふわと温かい気持ち。カヲルくんに会ってからだ。こんな気持ちを知ったのは。
そんなことを思うと、目からどんどんと涙が溢れる。

「シンジくん…」

「んっ」

必死で涙を拭う僕の目の前にカヲルくんの綺麗な顔が。反射的に目を瞑るとふわりと僕の唇に触れる柔らかいなにか。…いや、カヲルくんの唇。僕は今、カヲルくんにキスさせているんだ。

「カヲル、くん」

「とまった」

「え…?」

「涙。とまったね」

「え、あ…本当だ」

ぽろぽろと流れていた涙は止まり、カヲルくんが優しく撫でてくれる頬にはつぅ…と涙の痕が残っている。

「ありがとう」

「いいよ。僕が見たくなかっただけだからね。君の泣く姿が」

「カヲルくん…」

「僕は、シンジくんの笑顔が好きだから、ね」

「うん…」

カヲルくんの言葉にふにゃりと頬が緩む。また、胸にあの気持ちが湧き上がる。そして再び思うんだ。

幸せだな…って。

「じゃあ、帰ろうか。あまり遅くなると心配されるだろうしね」

「うん。あ、あのさ…カヲルくん」

「ん?どうかたかい?」

「えっと…ありがとう。わざわざ、こんなところに」

「いや、僕が誘ったんだ。僕の方こそありがとう。一緒に来てくれて」

「う、うん…。あ!ね、今度さ…日曜、お互い暇だったら、遊びにいかない?ショッピングとか…あ、もう1回海とかでもいいね」

そう提案するとカヲルくんは笑って賛成してくれた。

「じゃあ、どこがいいかな?」

「君の行きたい所なら、どこでも…」

そんな話をしながら、僕らは空と海の色が同じ赤色な浜辺をゆっくり歩いた。


(gdgd)end.

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