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EVA
朝の空気と君のぬくもり*貞53


「あ―…ったかい」

そんな間の抜けた声が聞こえたのは、まだ空気が冷えているリビングからだ。
僕は食事の支度をしていた手を止め、キッチンからリビングを覗いた。

「渚…何やってんだよ」

「ストーブにあたってるんだよ。やっぱり、寒い朝はストーブだよね」

ふにゃっとストーブで温まったせいかほんのり色づいた頬を緩め、笑う渚。
相変わらず、呑気な奴だな。
そんなことを脳裏で呟きながらめ再び作業に戻る。

今日はいつにも増して寒い。足元も冷えるし、フライパンを持つ手は微かに震え、かじかむのがよくわかった。

「ね―。シンジ君もストーブ、あたりなよ」

「今、僕が何やってんのか分かって言ってるのか?それ」

「朝ごはん、作ってるんだろ?いいじゃん、中断すれば」

「僕はお腹空いてるんだ。温まってる暇はない」

きっぱりと言い切ると以降、渚の声はパタリと止んだ。諦めたかと思い、ため息をつく。

「ぎゅうっ!」

「!?」

それと同時に後ろから抱きすくめられた身体。犯人なんて見なくても分かる。

「渚…なんだよ」

「シンジ君が冷たいのは嫌だから、僕が温めてあげようと思って」

フフンと軽く鼻で笑えば、さらに抱き締めていた力を強くする。ストーブで温まった渚の体温が身体を通じて感じる。下手すると、渚へと溶け込んでしまいそうだ。

「シンジ君。温かい?」

「…まぁまぁかな」

「やった…」

嬉しそうな言葉が声が鼓膜を揺らす。
やっぱり、呑気だ。
そんなことを再び考えながら、抱き締めている渚の腕にそっと指を絡めた。

(君の体温は)
(ストーブの何倍も温かく)
(ぬくもりに満ちていた)



end.

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