A Short Story.
夏の蕾
夏休み入って3日が経った今日。
本来なら炎天下の中で部活をしているところを、数学の補習の為、教室へと続く廊下を歩いていた。
期末テストで赤点を取ったのは俺だけだった。
きっと1人なんだろうなんて思って教室のドアを開けた。
「如月!?」
「…ん?あ、森山君」
以外な人物がいた。
同じクラスの如月恭子。
赤点を取るような子ではないと思うんだけどなぁ。
「如月赤点?」
「ううん。その日休んじゃったから」
あぁそっか、と納得。先生は?と聞くと11時になったら戻ってくるらしい。それまでプリントをやっておけと。放任主義らしい。

***

あれから30分近く経っただろうか。お互いプリントに集中していたが、やっぱり体を動かしたい衝動に駆られた。
外を見ると部活をやってる生徒達がいた。
いいなぁ〜…。
そんな事を思って小さく溜め息を吐いた。
ただ外を見るたびに如月が目につく。なぜなら窓際に座ってるから。如月はスラスラ問題を解いているかと思ったら手を止め考える素振りをして、また手を動かす。
こうやって如月をしっかりと見るのは初めてだ。
普段は全然話すことはないし、気にすることもない子。
だから今日、こうやって2人で補習を受けてることが不思議に思える。
「あー、つまんない」
声に出してみた。如月は俺の方をチラッと見ると、またすぐにプリントに向いた。
「如月〜」
呼ぶとこっちに首だけ向いた。
「わかんない」と言うと軽く席を離れ、俺のプリントを覗き込むと、さっきまでやっていたであろうプリントを俺に差し出した。
「へ?」
「私教えるの苦手だから見ていいよ」
あってるかは保証できないけど、と一言苦笑ぎみに言って如月は窓の外に目を移した。もう終わっているらしい。
「マジで?ありがとー!!」
俺はプリントを写すことに専念した。

***

11時になって戻ってきた先生に2人でプリントを渡した。
帰ろうとしている如月を呼び止めた。
「如月、一緒に帰らない?」
「え?いいけど…」
部活は?と聞かれ、今日は休むって言っといた!って言うとまた如月は苦笑ぎみに笑った。
「さっきのお礼にアイス奢るからさ!!」
「さっきの?」
「ほら、プリントの」
「あぁ」
「じゃあ帰ろ!!」
「…うん!」
如月がちゃんと笑ったところをやっと見ることができた。
なんか顔が熱い。
ついでに言えば胸の辺りが煩い。
なんだろう、この感じ。
とりあえず夏の所為にしよう。
とりあえず2人でアイスを食べよう!

[back]

17/17ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!