A Short Story.
寒い日は
寒い日が続くと私は、人肌が恋しくなる。別にヤラシイ気持ちは無いが、手を繋いだりギュッと抱きしめられたりしたくなるのだ。
最近、私は彼に会っていない。
2年近く付き合ってる彼は私の1つ年上で大学に通っている。お互い学年も学校も違うから、片方が暇でも片方が忙しいなんて事はよくあることだ。邪魔しちゃ悪いからメールも電話もしていない。だから、すれ違いが起きる。“そろそろお別れかな”と何気なく頭をよぎる。
〜♪
メールの受信音が鳴った。
この音は彼からのメールの音だ。
宛名を見ると案の定、彼からだった。
『〇×駅に来て』
メールの内容はこれだけだった。やっぱり別れ話だろうかと思いながらも上着を着て家を出た。
外は相変わらず寒かった。確か、今日の気温は一桁だったっけ?そりゃ寒いよね。でも自分の心はもっと寒い。彼からの呼び出しに複雑な気持ちになりながらでも足は指定の場所へ向かった。
着いた先には、彼が鼻を赤くしながら立っていた。久しぶりに彼の顔を見た。何ヶ月ぶりだろうか。
「久しぶり」
久しぶりに彼の声を聞いた。
「久しぶり。どうしたの、急に。学校の方はいいの?」
これから言われる事を考えると、どうしても冷たい言い方になってしまう。
「最近会ってなかったでしょ、俺達。だから…」
来た。やっぱり別れ話。
まだ彼のこと好きだけど、泣かずに別れる準備は出来てる。…彼がいなくなってから泣く準備も。
「会いたくなったんだ、お前に」
泣くな。泣かずに笑え。笑って別れを…あれ?
「え?」
「だから、会いたくなったんだって!」
ホントに?
彼は顔も赤くしながら頬を掻いた。
「それに言ってたろ、お前。“寒いと人肌が恋しい”って。だから来たんだけど…って、何泣いてんだよ!?」
「だって…」
だって、嬉しいんだもん。
会いに来てくれたのが、覚えていてくれたのが。
泣かない準備もしてたのに、涙は止まらない。
「うぅっ、…ずずっ」
「ったく…」
ギュッ
「!」
「人肌が恋しいんだろ?…俺も恋しいし…」
「!!」
彼は私を殺す気か。ものすごく嬉しい事を言ってくれる。
さっきまで寒かった心が暖かくなる。心なしか、顔もほかほかしてきた。心臓もドキドキしっぱなしだ。
「フフッ」
「?何だよ」
「ありがとう」
「…それは俺も同じだ。ありがとう」
本当にありがとう。
そして、これからもずっと一緒に…。
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