NandS
其の7
「あっそうそう。仕事と言えば、これから依頼人に会いに行くから」
「ふ〜ん」
七海の相手に疲れた誠一は適当に相槌を打った。
「『ふ〜ん』ぢゃないっ!誠一、アンタも行くのよ」
「へぇ?」
「ほら、早くして、聞こえなかった?アンタも行・く・のぉ」
誠一は七海に有無を言わさず連行された。
「えぇぇぇぇぇ!」
情けない絶叫が辺りに響き渡り、異人でも見るような視線が誠一にズブリ、ズブリ、と突き刺さった。

七海に連行されてから暫くすると一つの古めかしい喫茶店に行き着いた。
「えっと、ここよね」
喫茶店の住所を確認して七海は言った。
「さて、入るわよ」
そう七海は言うと喫茶店カールに入っいく。渋々顔の誠一も後に続いた。

 カランコロン

ドアに付いた鐘が古めかしい音を立てる。
 店の中は木の香りで満ち、ジャズが小さな音量で流れていた。まるでこの店だけが時の流れに取り残されたような、そんな感覚に陥らせる。
「わぁ〜お。凄いわね誠一」
「だな」
七海の感嘆の声に同意する誠一。そんな二人に店のマスターらしき人から声を掛けられた。
「気に入ったかね?」
「えぇ。とっても」
「そうか、そうか」
恰幅のいい躰を嬉しそうに揺らしてマスターは言う。
「ところでお嬢ちゃん達みたいな若い人がこんな場所にくるなんて珍しい。何か訳有りかい?」
「まぁね。依頼人に会いに来たのよ」
サラリと言った七海にマスターは目を丸くしたが暫く七海達を観察するように目を細くした。やがて一人得心がいったように頷いた。
「そうか、そうか、君たちがあの噂の――――」

 カランコロン

店の鐘がなり来訪者を告げる。

背広を着た来訪者はマスターに小さく囁いた。
「あいよ。終ったら声をかけてくれ」
そう言うとマスターは店の表札を開店から休業にかえカーテンを閉め姿を消した。
「いつも、すまない」
背広を着た来訪者はそうマスターに告げると一礼して七海達に向き直る。

「さて、本題に入ろう」

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