白くまマン
黒くまマン

 僕は今日の出来事をここに書き記そう。皆なに知ってもらわなければならない。禁忌(タブー)の言葉を……。


 その日は冬のよく晴れた日だった。僕は何時ものようにフィールドワークをしていた。調査対象は、最近、巷(ちまた)で噂になっている“白くまマン”についてだ。
 調査していくにつれて白くまマンの他にもう一つの噂が浮上した。
 それは―――“白くまマン”と対になる存在“黒くまマン”だ。
 外見出で立ちは似ているが決定的に違う存在であると言う事だ。
 興味をそそられた僕は調査対象を白くまマンから黒くまマンに切り替え調査を進めた。
 調査して行く内にわかったのだが黒くまマンの存在はまだ、あまり伝わっていなようだ。少ない情報の中それでも僕は根気よくフィールドワークを続けた。
 フィールドワークを続けている内に、いつの間にか河原まできていた。ここにはもう有力な情報はないと思い引き替えそうとした時、僕の耳は確かに聞き捉えた。
 誰かの泣き声を……!
 僕は声のする方へと急いだ。息を切らしながらも僕は声が発せられた場所を捜し当てた。
 そこには何か焦げた匂いが漂い、その匂いの元と思われる焦げた何かを持ちながら今なお泣きじゃくっている女の子がいた。
 そしてその女の子に覆い被さるような影が一つ。
 その影を辿るとそこにいたのは目撃情報などから言えば白くまマンだった。
 だがそれは明らかに違っていた。それは黒かった太陽の逆光だとしてもそれはあまりにも黒すぎた。
 それは、まさに―――“黒くまマン”―――だった。
 黒くまマンは僕を見て笑いそして去っていった。

 女の子は泣きじゃくったまま時間だけが過ぎた。
 暫らくすると女の子は泣き止みポツリ、ポツリと話しはじめた。

 女の子の話をまとめるとこうだ
 女の子は河原で遊んでいた。
 そんな所に突風が吹いて大事な人形が河に流されてしまった。
 どうする事もできない女の子は泣きだしたが、そんな時友達との話を思い出した。そして試してみる事にした。そう、白くまマンを――。
 女の子は嗚咽を堪えながら白くまマンと呼んだのだが息が詰まり途切れ途切れとなった。
 途切れ途切れの言葉を繋げると――。

『くろくままん』

 するとどこからともなく黒い煙りが出てくると目の前に黒くまがいた。
 黒くまマンは河から人形をすくい上げると女の子の目の前まで持ち上げ燃やしたのだ。まるで乾かしてあげるよとばかりに。
 女の子の手元には灰になった人形がぎゅっと抱き締められていた。

 以上が今日僕が体験した事だ。無常にも女の子は悪くなかった。ただ泣いていた事により上手く言えなかった。それだけの事でこうも結果が変わってしまった。だから僕は書き記そう。二度と同じ過ちが繰り返されぬよう。二度と悲劇が生まれぬように。
 決して口にしてはならぬ禁忌(タブー)の言葉を――。

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