白くまマン
夏の終りに……

 夏休みもあと少し。本当にあっと言う間に終っちゃうんだなぁ……。
 宿題も終ってるしお祭りにも行ったし。ちゃんとかき氷も食べたし。他にやり残した事は……。

「あっ! 花火!」

 そうだそうだ。すっかり忘れていた。やろうと思って買っておいたのに。

「そうと決まれば早速」

 わたしは家の近くの公園にバケツと花火と着火器具を持って行く。
 バケツに消化用の水を汲み、よしっ! 準備万端!

「どれからやろうかな……」

 何せ大量に購入していたので選び放題より取り見取り。わたしは花火の山から迷った末、目を瞑り掴み取った花火から始める事にした。

「これ!」

 選んだ花火に火を灯す。

 ジュっ……バチバチバチッ!

 形容するならそんな音をたてながら花火は色とりどりの火の粉を撒き散らす。

「うわぁー。綺麗ぃ〜」

 わたしが毎年やる事はそう言いながら踊る。勿論、花火は手に持ったまま。
 火の粉がわたしの周りをヒラヒラ舞い照らす。

「ただ、これって煙いんだよね」

 毎年同じ事を繰り返してよく飽きないものだなぁ〜。と我ながら感心する。
 暫く後。

「つまんない」

 やっぱり一人で花火は虚しすぎか……。

「だって皆な、宿題終ってないから無理とか言うんだもん!」

 一人で叫んだとこで更に虚しいだけというか。皆なでやろうと思って大量購入が仇となりました。何せ夏休みの最後と言えば宿題の追込み。学生ならではの風物詩。

「来年じゃしけっちゃうだろうし」

 ため息付きながらそれでも地道に花火を消費。

「綺麗で楽しいはずなんだけどなぁ……」

 珍しく誰もいない公園は静かでつまらない。誰でもいいから来ないかなぁ……。

「そうだっ!」

 そう言えば宿題終ってない奴が「これから『白くまマン』に手伝ってもらうんだっ!」とか言ってたっけ。

「……白くまマン?」

 わたしは小さく呟いた時、辺り一面が白い煙で覆われた。

「えっ! 何? そんなに花火に火付けたっけ?!」

 パニくってるわたしの前に何時の間にか白くまがいた。夏なのに黄色いマフラー、意外と似合うオレンジのヘルメットを身につけ公園の遊具に片足を乗せた格好で登場していた。

「……白くまマン?」

 白くまはコクンと頷いた。その時わたしの脳裏に友達との会話が浮上した。

『白くまマン? って何?』

『白くまマン知らないのー?! 遅れてるぅ〜』

『白くまマンって呼ぶと白い煙とともに白くまマンが顕れて……』

『うん、それで』

『何でも願いを叶えてくれるのよ』

『へぇ〜。そうなんだぁ〜』

『信じてないでしょ!』

『だって――』

 これだ! ただの噂かと思ってたんだけど本当だったんだぁ〜!

「何でも願いを叶えてくるの?」

 そうわたしが聞くと白くまマンは少し首を傾げて横に振った。

「えっ! お願い叶えてくれないの?」

 わたしが再度聞くとこれにも白くまマンは少し首を傾げて横に振った。わたしは更にどう言う事か聞こうとすると白くまマンは急に地面をなぞり始めた。

「なになに……『困った人を助けるのが使命だから、願いを叶えるのとは少し違う。』なるほどね!」

 ならわたしの困っている事兼お願い事は……。

「白くまマン! 一緒に花火やろう! 一人じゃ全然できない量だから困ってたの!」

 それに一人じゃつまらないし。

 こうしてわたしは白くまマンと花火をすると言う貴重な経験をする事ができ夏の終りにとても楽しい思い出を作る事に成功し大満足でした。

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