白くまマン
狭いんだよっ!!
朝7時過ぎ。通勤ラッシュのため電車の中は人でいっぱいだった。今走っている電車にはサラリーマンやOLだけでなく多くの学生も乗っていた。
ある駅に止まったとき、一人の女子高生が乗車した。
彼女は入れるスペースがあるかないかの車内に色々な人に潰されながらも目的の駅まで我慢して乗っていた。
ガタンゴトンと電車は揺れる。
時にはガタンッと大きく揺れる事もある。

ガタンッ

車体が大きく揺れたために乗客達も傾く。しかし、その揺れが止まったと同時に乗客達も元に戻った。それは女子高生も同じことで。
「!?」
彼女は下半身に違和感を覚えた。こんなぎゅうぎゅう詰めならば身体に色々当たるのは仕方のない事だが今回ばかりは違った。
明らかに太ももを撫でられている。彼女は回るところまで首を回し視線を下に向けた。
やっぱり手は彼女の太ももに触れていた。それを確認した瞬間、身体中に鳥肌が立った。
「(ち、痴漢!気持ち悪い!!叫びたいけど…声が出ないっ!!)」
普段は痴漢にあってもちゃんと声が出るだろうと思っていたが、やっぱりいざとなると出ないものだ。
「(落ち着け自分!よく見るのよ!茶色の…黒のラインが入ったスーツ…。それにゴールドの時計。よしっ…)」
彼女は冷静に相手の服装を読み取り、誰にも聞こえないような少し震える声で言った。
「白くまマン」
すると狭い車内に白い煙と共に白くまマンが現れた。
彼女は白くまマンの登場のおかげで大きな声出せる事ができた。
「痴漢!!コイツ痴漢なの!!」
彼女が指差したのは顔が妙に脂ぎったバーコード頭のサラリーマンだった。サラリーマンは慌てて否定するが周りからは白い視線で見られるだけだった。しかも白くまマンに腕を捕まえているだけあって近くの人間の目は相当冷たかった。
次に止まった駅でサラリーマン、女子高生、白くまマンが降りるとすぐに駅員さんに声を掛けた。
だがサラリーマンはまだ認めていないらしく、自分のやった事を否定し続けていた。
「クソッ!こうなったのも全部お前のせいだ!!」
そう言って逆ギレしたサラリーマンが女子高生に手をあげようとした瞬間、女子高生の前に白い影が現れた。
白くまマンだ。
白くまマンはサラリーマンの振り上げた拳を受け止め彼女を護ったのだ。
その後、駅員さんに連れて行かれたサラリーマンを見送ったあと、白くまマンは女子高生の手を握り駅を出た。
「どうしたの?」
白くまマンは黙ってオレンジ色のヘルメットを渡した。そして黙ってバイクの後ろを指差す。
「乗れってこと?」
こくんと頷く白くまマン。女子高生は嬉しくなってバイクの後ろの席に乗った。
彼女はこの日学校をサボった。

その頃車内では。
「(痴漢が出たのはビックリしたなぁ…。それにしても…」
『(白くまマン…いきなり現れて、ぶっちゃけ車内キツかった)』
誰もがそう思ったとか。

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