短冊集
☆打つべし(カレカノ)
二人は幼なじみ。小さなときからよく一緒にいる。
彼はあまり社交的ではないことから、みんなから堅物だと言われている。彼女はそんな彼を振り回すことから、みんなから女王様だと言われている。
今日は二人で雨宿り。傘を持たずに買い物に出掛けたところ、帰り道で夕立に出会ってしまった。なかなか雨が止まない中、彼女はいつからかボクサーのように屋根の雨垂れをその拳で狙い続けていた。
シュッ……シュッ……シュッ──
そう、それはまるでチャンピオンに挑む挑戦者のように。
「楽しいか?」
飽きることなく同じ動作を繰り返す彼女に呆れた彼が問いかけた。
「ちょっと今っ……練習中だからっ……話しかけない……でっ」
問いかけに答えながらも彼女は動作を止めないため、拳の動きに会わせて言葉じりが切れてしまう。
「いったいなんの練習だよ」
「そりゃっ……もちろんっ……狙ったものをっ……撃ち抜く──」
ファイティングポーズをとったまま、くるりと彼の方に身体を向けた。
「──ためだっ……よっと!」
彼女の拳が当たり、彼の胸の胸元はじんわり濃くなった。
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