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まよたま!
10.夜間警備@
「いったいどこにいるんだか」


 オレは人工の光で照らされるようになった住宅街を歩いている。それもこれも、どこにいるとも分からない熊を探すためだ。


 事前情報として襲われた人は夜一人で出歩いていたとある。今その条件は満たせている。


 しかし被害者に共通している女性という点は決して満たせていない。オレは女装なんてしていないし、する気もない。女性という要素は完全に0である。



 今回の霊の目的が女性でなければいいんだがな。もし今日ミスしたら次から咲来が囮をするとか言いだす可能性もあるからやっかいだ。


 それに熊は恋人と別れさせているという目的があるのかも知れない。オレは恋人と幸せラブラブな人物でもない。実際のところ熊に出会える確率はかなり低そうだ。



 それにしてもしかし、見回りしてるのにまったく違う所で事件が起きてたら、大助にいい笑いもんにされそうで癪だな。あいつは分かってて仕事を任せたくせに笑いやがる。



 思想に耽りながら一定間隔で並ぶ電柱ごとに付いた電灯に照らされる道並を歩く。今のところオレ以外の気配はまったくない。


 いくつもの明暗を繰り返した後に、家と家の隙間から音が聞こえてきた。


「風か?」


 たしかに風が吹いている。乾いた音だからゴミ袋が擦れ合っているのだろうと考えた。数歩進んで音がする隙間の前に来た。


 思った通りそこには白いゴミ袋があった。そして動いている。しかしそれは風によってではなさそうだ。



 うん。あれはネズミだな。



 オレは黒い物体が白い袋からはみ出して動いているのを確認してそのまま通り過ぎた。幽霊なんていうものを相手にしているが、むしろ生きているものの方が苦手という現実だ。



 なかなか出会うことがなかったので知らなかったが、ネズミって案外でかいんだな。



「さて次はいったい何に出会えるかな」


 冗談混じりに一人ごちったときに十字路から女性が出てきた。ちらりとこちらを見たのは人がいることを確認しただけのようで、変出者とは思われなかったはずだ。



 しかしこんなときに一人で歩くとは肝が座ってるな。



 ぱっと見の感じ、その人物は確かに凛としてできる女というイメージだ。


 彼女が前を横切る形でお互い真っすぐに進み、彼女がオレの姿を見たのはその一度だった。


「え?」


 オレが十字路を横切ろうとしたときにその女性が発したであろう声が聞こえた。何かしたか、と思いながらオレが目をやると彼女は特にこちらを見ている訳ではない。視線は元からの進行方向に向いている。その視線の先にあるのはゴミ置場で網が置かれている。


 そしてその近くに立っているものがある。それは日常であるようで決して日常ではないもの。それはオレが探しているもの。


『お前も捨てられろ……』


 それは冷たさのある声で、どこぞで聞いたセリフを呟いた。



 そう。それは動く熊野郎だ。



『お前も捨てられろ』


 熊の人形はその小さな足を一歩前進させた。それに合わせて女性は一歩後退する。


「あんた、ここから離れろ」


 オレは一般人を巻き込まないように忠告し近づいていった。


「え……。あ……」


 女性はオレと熊を交互に見比べるだけでそこから動こうとしない。



 仕方ねえな。



 オレは氣をコントロールし足に集中。それを一気に解放し高い加速を得た。


 女性が熊からこちらに視線を向ける寸前にオレが疾走したため、まさに消えたと思えただろう。


 熊に近づいたオレは足にまとった氣をそのまま利用し、熊を蹴り飛ばした。


 シュートは見事にきまり熊は彼方へ飛んでいく。オレは追い掛けるためもう一度氣を破裂させた。



 再び女性が正面を向いたとき何もなかったかのようなスムーズな動きだっただろう。

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あきゅろす。
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