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まよたま!
1.首狩りくまさん
「首狩りくまさんだぁ?」


 オレはいったいどこのB級童話だと思って声を上げた。その原因を作ったのは目の前のソファーに座り、オレの秘書を見つめるヒゲ面男だ。コイツはたまに自分の仕事をサボるためによくオレの事務所にやってくる。


「右京さん、巷の噂話も知らないんですか?」


 秘書こと咲来は見つめられていることなど気にしない様子でオレに語り掛けてきた。


「なんだ咲来は知っているのか? そんなに有名な話なのか?」


「そうですよ。ボクの友達もよく噂してます」


 咲来は秘書といっても本職は学生で一人称はボクだが女性だ。


「だよね、咲来ちゃん。右京はこれだから困るよ」


 ヒゲ面男こと大助は同意するために脳震盪を起こしそうなほど首を激しく振っている。


「有名だってことは分かった。それでオレにどうしろと? やっぱぶっ飛ばしときゃいいのか?」


「簡単に言うとな」


「なんだ本当に単純だな」


「だが実はな、物騒な名前の割りに死者は一人も出ていないんだ。必ず腕や脚なんかに切り傷は負うんだが、これからの人生に支障が出るレベルでもない。首狩りという異名も死神のような鎌を持っていることだけが理由らしいんだ」


「なんだそりゃ。度胸があるのかないのかよく分からん霊だな」


「しかし裏では大きな問題が起きているです!」


 咲来にしては珍しく大きな声を出した。オレは驚きつつもその先を促した。


「どうしたっていうんだ?」


「被害にあったのはみんな女性なんです」


「それぐらいの共通点ならどんな事件にでもありそうなことじゃないか?」


「重要なのはここからです。みんな襲われる前は恋人ととても幸せだったのに、襲われた直後別れているんです」


 バンッと迫力ある音で机を叩いた。


「それはタイミングの問題だったり男がビビリだっただけとかじゃないのか?」


「いや、そこにはオレも気になったんだ。オレ達は、必ずしもそれが引き金になったとは考えられないことにも注目しなければいけないからな」


 大助は、自分は仕事してますよアピールをするかのように話に入ってきた。


「聞いた話なんですが『お前も私と同じように捨てられろ』って声が聞こえるらしいですよ」


「ということは……浮気され捨てられた嫉妬深い女の怨念か?」



 オレのこの予想こそB級作品のようだな。



「やっぱりそう考えるのが妥当なのか? 咲来ちゃんはどう思うんだい?」


「ボクですか? ボクはなんか違うような気が……。でもボクの友達は怨念だ怨念だって言ってますね」


 どこか腑に落ちない様子で腕組みをしながら呟く咲来。しかしすぐに切り替えて清潔そうな白い布を取り出した。大助はソファーから立ち上がり、頬杖つくオレの正面に来て肩を叩いた。


「ま、今回はただ成敗するだけだから頑張ってくれたまえ、右京君」


「何お偉いさんぶってんだよ」


「ふっ。驚異はなさそうだし気軽にやってくれ。
 あ、そうだった。すまないが咲来ちゃん、これは右京一人にやってもらうよ?」


 咲来は間近に迫る、戦闘が絡むであろう現場に対してリボルバーを磨いていたが、大助の言葉にリボルバーを机の上に落としてしまった。

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あきゅろす。
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