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まよたま!
9.捜索開始
 オレは運良く殺されることなく、今こうして生を実感している。



 生きているってすばらしいことだなぁ。



 新鮮な空気のなんとおいしいことか。




 とまぁそんなぐあいで、オレと咲来はじいさんを探すために出かけることになった。結局咲来の持つ日本刀は風呂敷に包むという古典的な手法で隠している。




「なんだか今日は景色が違って見えますね」


 咲来の声はいつもより少し高めだ。


「そうか? オレにはいつもと同じ平々凡々な風景に見えるけど」


「これだから……」


 咲来はこれでもかってぐらいのため息を吐いた。


「オレは自分の思うままに言っただけだぞ。それなのになんだその反応?」


 ため息を吐いて下向き加減になっていた顔を持ち上げて一度咳払いした。


「いいですか、右京さん。ボクは右京さんと同じように視える人間です。でも関わるなって言われてたから干渉しないように心掛けていたんですよ?」


「へ〜、ちゃんとオレとの約束守ってたのか? さすがは咲来だな」




 咲来はオレと出会ったときに約束をしていた。




 視えるから関わらなければいけない。




 そんな決まりはない。そして関わらなくていいなら関わらない方がいい。


 オレが咲来と初めて出会ったとき、アイツは視えるだけで知識はない状態だった。


 だからオレは咲来に理解してから関わるようにしてもらいたかった。





「右京さん!」


 少し先を歩いている咲来がオレの名前を呼びながら振り返った。


「どうした? じいさん見つけたのか?」


「いえ。この曲がり角からいきなり魑魅魍魎がうじゃうじゃって出てきたりしませんかね?」


 咲来はまるで尾行しているように道路の塀に背中をあてた。こっそり曲がり角の先を覗いている。しかも顔をにやけさせながら。


「んなこと期待してんじゃねぇよ……」


「ノリが悪いですね。ボクは今までガマンしてたんですから少しは楽しませてくださいよ」


「はいはい、分かったよ。でもあんまはしゃぎすぎるんじゃねぇぞ?」


「ボクは子どもじゃないんだから、それくらい言われなくても分かってます!
 それにしてもいざ探すとなると、霊自体ってあんまり見かけませんね?」


「そこら中に逃げてきた霊がいたとしても仕事が増えて困っちまうな。まぁ今関係ない霊さえ見つからないのは、オレの働きっぷりのおかげだろうな」


 そうですね、と聞き流す程度の反応だけ見せ、咲来は次の曲がり角でも同じことをしようとしている。


「咲来、オレの経験から一つ言わせてくれ。そんなに気にせず歩いているときの方が、霊も警戒しないのか周りに現われてくる気がするぞ」


「だったら今のボクは危険だって言うんですか!?」


 咲来は覗き込もうとしていたのを止め、オレの方へ歩み寄ってきた。


「まぁオレには、楽しもうとしているヤツが安全とは言いきれないな」


「だって気になるじゃないですか。あの霊はなんなんだろう、この霊はどうしてこんなところにいるんだろうって。
 今だってホラ……あそこに浮いている霊がどこへ行こうとしているのか気になるじゃないですか?」


 オレは咲来の指差した先を辿った。



 ん?



「おい、あれって……」

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